私は鑑定の依頼を受けた時は、事故現場の土地にとどまっている地縛霊とドライバーの波長が合ってしまったことで事故が引き起こされたのかと考えました。しかし、事故現場と車を確認したところ、この車には取り憑いている不浄霊がいました。それは本来ならこの車の最初の所有者となるべき人の霊でした。この方は大好きなこの車を買うために、一所懸命働いてお金を貯めて、やっと契約して納車を待っていました。しかし、納車を待っていた時に不慮の事故に遭って亡くなってしまったのです。念願かなってやっと購入した車のハンドルを一度も握ることなく死んでしまったのです。そして、この車を運転したかった強い思いがやがて執着となり、死んでもなお、この車に取り憑いて離れようとしなかったのです。自分がお金を貯めて買った車に乗りたいという思いは、決してネガティブなものではありません。それでもその夢がかなえられなかったとき、その執着の度合いが過ぎれば、その思いが重しになってあの世へ上がることを阻んでしまいます。
同じようなケースはたくさんあります。人を好きになることは悪いことではありません。ただ、一方的な思いを抱いて、そこに執着し過ぎれば、ストーカーとなって、相手から嫌われることはもちろん、法律によって処罰されることもあります。さらに命を落としても相手の女性への思いが募って、いつまでもその女性の元を離れずに不浄霊化してしまうこともあります。
以前、私に相談してきた女性は、ある有名バンドのボーカルの男性と相思相愛であると言っていました。アルバムの累計販売枚数は我が国のトップクラスのバンドです。ただ、この女性によれば、コンサートに行けばステージからボーカルの男性がいつも自分を見つめていて、時にはピックをわざと自分の方へ飛ばしてくれることもあると言っていました。ただ、いつもファンクラブの人たちが邪魔をするために、二人で食事やデートへ行くこともできない。そのため、どうしたら自分が彼の思いに応えて二人で過ごすことができるのかを私に尋ねてきたのです。もちろん、この女性の話は、バンドのボーカル男性を好きになりすぎた結果の妄想です。普通に考えれば、二人で会ったこともデートしたこともない男性と相思相愛とは思いません。しかし、好きの気持ちが昂じてくると、本人は本当にボーカルの男性が自分を愛して、ステージの上から、自分へ向けて語る声が聞こえてくるというのです。
大きなお屋敷のワインセラーにしばしば幽霊が出ると言って私に相談してきた方がいました。そこへ行ってみると確かに不浄霊が訪れている痕跡があり、不浄霊が放つ嫌な臭いが充満していました。私はどのような霊が何の目的のためにやって来るのかを霊視しました。比較的新しい霊ですので、ご家族に頼んでこの家にあるアルバムを見せてもらいました。すると依頼した方の祖父に当たる方が、亡くなったあと、成仏することができずにたびたびやって来ていることが分かりました。その理由はオークションで手に入れた希少価値のあるワインを一口も口にすることができずに亡くなってしまった無念の思いだったのです。
人が死んで肉体を抜けて魂になってもスムーズにあの世へ上がれないことがあります。その理由は多くの場合、憎しみ・恨み・嫉妬・後悔などのネガティブな思いが重しになっています。ただ、大好きな思いが執着になって、その重さで現世にとどまってしまうこともあるのです。