私はまず、お母さんに話して、「ともかく一刻も早くこの病院からお嬢さんを退院させるべきだ」と話しました。まったく精神を病んでいないお嬢さんも、この病院に入院させているうちに本当に病気になってしまうと強く感じたからです。妹と仲の悪いお兄さんは、このまま妹を病院にとどめておこうと、さまざまな理由をつけて入院を継続するようにお母さんに働きかけました。私は
「もし、お嬢さんが本当に精神を病んでいるなら、他の病院で精神科の治療を受けさせてください。それなら妹さんの精神病を主張する息子さんも納得するのではありませんか」
と強く退院を勧めました。
娘さんの退院について、院長は大反対をしてなかなか認めようとしません。そして、見舞いで対面したお嬢さんは、こちらの簡単な質問にまともに答えることができず、確かに正常ではありませんでした。私はどうしても院長が退院を認めないなら、警察や医師会に働きかけてでもこの病院を出すべきだと言いました。そして今、「お嬢さんを守れるのはお母さんしかいないこと」を強く訴えました。
結果として、最後は院長が根負けする形でお嬢さんは退院しました。そして実家に戻ったお嬢さんは見る見る安定して正常な状態に戻ったのです。お嬢さんの話では、何かこちらからクレームを言えば、拘束着を着せられて病室に閉じ込められていたのです。そして、しばしば注射を打たれて意識がもうろうとして、何も考えられなくなると、お母さんが面会に来たと言ったのです。その後、このお嬢さんは仕事に就いて普通に働き始めました。特に大きなトラブルもなく仕事は今も続けています。お兄さんは仕事の関係で中国へ引っ越して母娘とは別の生活をしています。父親は離婚をしていていませんでした。
この病院はその後、何度か訴訟を起こされました。院長が有罪になって服役することはありませんでしたが、やがて悪評が広がって廃院しました。大阪府内にあった病院ですが、今の状況はわかりません。
私が除霊をして結界を張ったマンションですが、そこにあった病院もきっと同じような状況だったのだと思います。医療の名を借りたお金儲けのために、多くの患者さんを無理やりここに拘束して、患者さんの未来や幸せを奪っていたのでしょう。その患者さんの怒りや悲しみ、そして無念の思いは、建物が無くなってもその土地にしみ込んでいます。それは10年や20年で簡単に消えるものではありません。このマンションのように、新しい建物が建ってもそこに住む人と同調してしまえば、やり場のない怒りは同調した人がかぶることになります。その結果、霊体を見なくても明確な理由が無くても、このマンションに住むことに不快感を感じて、多くの住人が引っ越していたのです。