私はこの仕事をするにあたり、何かの資格を取ったりスクールに通ったりしたわけではありません。特に私が若いころは、霊と言えば、「お化けには足はついているのか?」と聞かれるような時代でした。心霊現象も霊体験も四谷怪談も同じジャンルで、まじめにスピリチュアルと向き合っている書籍は、日本中どこの本屋を探してもありませんでした。唯一あったのは、洋書でした。シュタイナーやウスペンスキー、グルジェフやクリシュナムルティの本を洋書の専門店で見つけることは出来ましたが、英語もドイツ語もロシア語も堪能でない私は、辞書を買ってきて、本に書かれた文字を必死で追いかけて訳を入れていくしかありません。一冊の本を読むだけで、1年以上の時間がかかりました。
私が持っている普通と違う感覚を説明してくれる人もいませんから、まさに試行錯誤の中で自分に起こっていることを一つ一つ理解していきました。私が生きている世界は、シュタイナーの言葉を借りると、まさに”超感覚的な世界”です。ですから基本的には自分で感じ取っていくしかありません。ただ、除霊や浄霊はやり方があります。超感覚的な認識を持った上で、方法論を自分で会得していくのです。
私は除霊や浄霊のやり方はある僧侶から教わりました。その僧侶の元にはすでに僧籍を持つ人が何人か集まって勉強していました。その中に霊的にとても開いている(=霊的間口の広い)女性がいました。彼女が感じた感覚はしばしば私と一致していて、私は彼女から良い刺激を何度ももらいました。しかし、彼女が今、どこで何をしているのか、生きているのか死んでいるのかも私は知りません。もう、20年以上前から連絡が取れなくなっているのです。最後に彼女と会ったときに、私が皆さんの相談にお答えしたり、除霊や浄霊を行っていることを話すと、彼女は私をとても羨ましく思っていると言いました。霊的な問題で悪影響を受けている人は確かに存在しています。そんな皆さんが本来その人が歩むべき人生をしっかりと進んでいけるように、自分で役に立つことを実行していきたいと話していました。
ただ、彼女がいわゆる”霊能者”として歩んでいくには大きな壁がありました。彼女はとても鋭く目に見えない世界を感じ取ることができるのですが、自分が感じた世界を言葉で分かりやすく伝えることができないのです。
私はいつも「幸せな人生を歩んでいくためには頭で考えることと心で感じることが必要」と話しています。知識や経験は幸せな人生を生きるために役に立つものです。それとともに理屈抜きで状況を正確に感じ取れる感覚を養うことができれば、常に正しい選択をすることができます。そして人生のレールから踏み外すことは無くなります。残念ながら彼女の場合は、あまりにもスピリチュアルに傾きすぎていて、現実的な認識を持つことができないのです。この両者のバランスが良い人は概ね人生は幸せに暮らしています。
彼女が感じた世界、具体的には「あなたの家の玄関に金色のカエルが座っていて、あなたの方へ向かって大声で鳴いています」或いは、「あなたの家の屋根にカラスが2羽飛んできました」、これをそのまま伝えても、聞いている人は一体何のことだかよく理解できません。金色は金運につながるものですから、玄関に金色のカエルが来てこちらを向いているということは、何かお金がにつながる良いことが起こると解釈することができます。カラスは不吉な鳥ですから、それが2羽も飛んできたということは、何か悪いことが2回起こりそうだと想像できます。ただ、それを日本語に変換して、分かりやすく伝えなければ相談者は誰も納得しないでしょう。私の仕事は超感覚的に感じ取るとともに、それを分かりやすく相手へ伝える変換力を持つことが必要なのです。
自分が分かっていることと、それを相手に伝えることは違います。素晴らしい能力を持っている彼女がどこかで生きていてくれることを切に願います。