先日、「仕事をする意欲が無くなった」という男性から相談がありました。彼は高校を出て、大きな会社に就職して、その会社で営業として20年以上もバリバリ働いていました。営業職は数字で評価される仕事です。学歴や資格もない彼には、売り上げの数字で評価される営業職が性に合っていたようです。そしてがむしゃらに働いて営業成績を上げて、本社営業部の次長にまで出世していました。

 

しかし、そんなプラス思考で頑張っていた彼は、ちょっとしたお得意さんとのトラブルで上司にひどく叱責されてから、自分の中のやる気が音を立てて崩れたと言います。そのとき心がボキッと折れた音が、はっきりと聞こえたそうです。それから仕事の意欲を失ない、彼に対する会社の評価も下がりました。そして本社営業部の次長職ではありえないような閑職へ飛ばされました。そして今は、メンタルを病んでいるという診断書を提出して会社を休職しています。

 

彼は自分を叱りつけた上司を一時は恨んでいましたが、今では恨む気持ちさえ萎えてしまい、ただ、死なないために生きていると言いました。このまま会社を辞めて生活保護で命をつないでいければ、それで十分だと言いました。私はその時の状況を霊視して彼に伝えました。

「確かに意欲を失ったきっかけは上司の叱責だったと思います。ただ、私から見ると、心が折れてしまった理由は上司の言葉ではありません。仮にそのとき上司にひどく叱りつけられなかったとしても、いずれ近いうちにあなたの心は折れていたと思います」

彼は神妙に私の話を聞いていました。

「私から見ると、その時、あなたの心はすでに悲鳴を上げていて、崩壊寸前の状態にありました。それでも自分自身を叱咤激励して仕事へ邁進させた結果、とうとう心が折れてしまったのです」

 

私たちは子供の頃から”頑張ること””努力すること””目標を達成すること”は良いことだという擦り込みをされています。ただ、人間は機械ではありません。どれだけ意欲や能力が高くて、ブルドーザーのように強く問題を突破していける人でも、メンタルはそれほど頑強には出来ていません。機械でも、ときどき動きを止めてメンテナンスをしなければ壊れてしまいます。ましてや機械よりも繊細で脆弱な人間の心は負荷をかけ続ければいずれは崩壊してしまうのです。

 

また、年齢的な問題もあります。20代30代はまだ、パワーも勢いもありますから、多少無理をしても勢いで進んでいくことができます。ただ、そうやって若いころからがむしゃらに突き進んできた人ほど、40代半ばぐらいに突然心が折れることがあります。私はたくさんの皆さんの相談を受ける中でそんな事例を数多く見てきました。

 

頑張ることや目標へ向けて邁進していくことは決して悪いことではありません。成功を目指す上でそれは不可欠です。ただし、そこには一定のバランス感覚を持つことが必要なのです。無理し過ぎていないか?頑張りすぎていないか?自分のキャパを越えてことをやろうとしているのではないか?常に自分に問い合わせて確認しながら進んでいかなければなりません。特に40歳を過ぎてからは、この姿勢が必要になります。がむしゃらに頑張り続けて心が折れてしまっても、会社はあなたの頑張りに報いるために面倒を見てくれるわけではないのです。(2)へ続く。