先日、会社を経営している方とお話をしたときに、「社員がやる気を起こすような言葉をかけていきたい」と言われました。社長は社員のモチベーションをアップさせようと、さまざまな書籍を読んで、やる気が出るような話や言葉をたくさん覚えてきたのです。しかし、社長の声掛けによって社員がやる気を出したようには感じられず、私に「どういった言葉をかければ良いのか」質問してきたのです。

 

私は社長に次のように答えました。

 「どのような良い話も故事やことわざも、それを必要としていない人の前では意味を持ちません。社長が一人一人の社員に声をかけることはとても良いことです。そのときにその社員は、今何を考えているのか。今何を悩んでいるのか。今何を迷っているのか。そこにアンテナを向けてください。そうすると何となくでもその社員にかけるべき言葉が見えてくるはずです。つまり、かけるべき言葉の内容よりも、相手が何を求めているのかに注目してその言葉を選んでください。社長が良い話をたくさん知っているのに、社員の心が動かないのは、そのニーズが合っていないからです」

 

このことは、私が霊視鑑定でたくさんの人とお話をする中で、真っ先に行う作業です。人は鋼鉄のような強いハートを持っている人でも、感情があってその波は常に揺れています。したがって不安になったり、何かに迷う時期は必ずあります。そのタイミングでその人の求めに応じた回答ができるなら、回答の内容に関わらず、その言葉は相手に響きます。

 

以前、カラオケが下手で会社の忘年会や友人たちとの飲み会はいつも二の足を踏んでしまうという方がいました。その結果、友達もできず、引っ込み思案になって人間関係が苦手になったというのです。「カラオケなんて!?」と思う方もいると思いますが、本人にとってはそれが大きな問題になることもあるのです。その人は、「どうしたらカラオケを上手く歌うことができるのか」と私に尋ねてきたのです。

 

たとえば演歌が得意な方が、ポップスや歌謡曲が大好きな仲間と一緒にカラオケへ出かけたとします。そこで自分の好きな演歌をどれだけ上手く歌ったとしても、きっと受けることも盛り上がることもなく、浮いてしまうことになります。これも今話した社長の話と同じです。カラオケを上手く歌うコツは、私から見るとTPO(time.place.occasion)を合わせるということに尽きます。多少、リズムや音程が狂っていたとしても、TPOに合った曲を照れないで、大きな声で歌いきることができれば、その場は盛り上がり、拍手が沸き起こることになります。

 

私は時々、講演会を頼まれることがあります。その際も真っ先にTPOを考えます。そこに集まった方々が、霊の世界に興味があるのか、意識の話を聞きたいのか、施術を学びたいのか、それによって話の展開は大きく変わります。つまり、相手の心を動かそうと思うなら、自分が何を伝えたいのかよりも、相手が何を聞きたいのか、そこを感じ取って聞きたいことを話すことがポイントになります。これは仕事や恋愛を上手く進める上でも重要になります。