私から定期的に除霊などの施術を受けている方が何人もいます。以前、お会いしたお婆ちゃんは、足が悪くてもう何年も家の外へ出られなくなっています。病院へはもう何十件も回り、初めてお会いした時に見せられた診察券のカードは、厚さが10センチ近くにもなっていました。最初は整形外科を何件も回り、次は脳神経外科で脳の検査を受けました。それでも原因は不明で、精神科や心療内科へも行ったそうです。多くの病院では原因を推測して薬を出しますが、どの薬を飲んでも気持ちが悪くなるだけで一向に改善しませんでした。そのため知り合いに紹介されて、藁を掴む思いで私のところへ訪ねてきたのです。
私はお婆ちゃんとお会いして、かなり執拗な不浄霊が憑いていることがすぐに分かりました。この霊に憑かれたことによってお婆ちゃんのエーテル体(=霊的な身体)が傷つき、それがリンクしている肉体へ伝わったことで、足がスムーズに動かなくなっていました。特に膝と足首の関節が油の切れたジョイントのように固くなって曲がりません。そのため、膝を高く上げることができないので、短い歩幅で足を動かすことしかできないのです。それは一見すると”パーキンソン病”の症状に似ているのですが、検査をするとそれには該当しないと診断されているのです。
お婆ちゃんはマンションで一人暮らしをしています。身よりは誰もいません。そして家の中でも歩行器につかまらないと立ち上がることも自由に動くこともできません。日常生活は、週に3回訪れるヘルパーによって成り立っています。他に区から派遣された医師と歯科医師が1か月に1回訪れて診察します。しかし、診察した医師からは、「特に悪いところはない」と言われています。身体が動かないこと以外は、頭もはっきりして「大学の講義や講演会へ参加したい」と、向学心も旺盛なのです。私はこの霊は”浄霊”によって祓うことは出来ると答えました。ただ、肉体がすでに衰えてきているため、霊を祓っても回復するには相当の時間がかかると話しました。元凶となっている霊を祓い、霊の問題が解決しても肉体に憑依されていた長い時間が体と心に深く刻み込まれているからです。そうなると霊を祓っても心身がなかなか覚醒してこないのです。
お婆ちゃんはそれでも「浄霊をしてほしい」と依頼してきました。「また外に出ていろいろなところへ行きたい」と目を輝かせて訴えてきました。私は、お婆ちゃんの依頼を受けて直ちに浄霊を行い、元凶となっている霊を祓い、あの世へ上げました。そして浄霊が終わってからは、毎日のようにお婆ちゃんの家を訪問して、肉体を覚醒させるマントラを唱えてパワーを送りました。お婆ちゃんは私が訪れている間は「不思議と体が動く」と言って、フローリングされたリビングを歩き出します。私も全力でパワーを送り、マントラを唱えました。するとさっきまで歩行器無しでは立つこともままならなかったお婆ちゃんが、徐々に膝を上げて歩き出すのです。まるで行進でもしているように両手を振って、膝を高く上げて歩くのです。それとともにお婆ちゃんはご機嫌になって、昔の歌を歌いだします。声を上げて歌を歌いながら膝を上げて長いときは2時間も歩き続けます。
「せっかく動き出した足を止めたくない」
そう言って、私が無理をしないように促しても力強く歩き続けるのです。私は
「このペースなら、来月には外に出れるようになるかもしれません。頑張って歩きましょう」
と励ましながら、お婆ちゃんの足に合った薄ピンクのスニーカーをプレゼントしました。
お婆ちゃんは
「時間があれば深夜でも早朝でもいつでも家に来てください」
そういって私に家の鍵を預けました。(2)へ続く。