先日、出張鑑定先から車で帰宅していました。時間は夜の10時ごろです。ここから家へ向かうには、高速道路に乗るのが最短コースです。そして高速道路に乗るためには、小さな山を2つ越えていかなければなりません。ただ、この山越えの道は比較的整備されていて道幅も広いので特に危険はありません。山の中を通り抜ける一本道ですので道に迷う心配もありません。夜間で車はほとんど通っていなかったので、私は少しスピードを上げながら気持ちよく峠のドライブをしていました。
途中から街灯が薄暗くなり、峠の頂上に近づいたとき、公園のようにきれいに整備された広い緑地が目に入りました。私は横目でそれを眺めながら車を進ませていました。そのとき、きれいな緑地の中に大きな石門が目に飛び込みました。ふと目をやるとそこには「○○霊園」と書かれていました。
私はそれを目にした瞬間、ものすごく嫌な気持ちになりました。山の中を車で抜けるときに、霊園に行き当たることは時々あります。それは特に珍しいことではないので、霊園の横を通り過ぎたことが嫌だったのではありません。今、この時間にこの場所で霊園を通り過ぎたことに、大きな不安を感じ、何か良くないことが起こりそうな予兆を感じたのです。
私は墓地が目に入らないように、意識して目の前の道路だけを凝視していました。そして頂上を通り過ぎて、下り坂に入ったころに”明らかに車の周囲に何かいる”と感じました。私はそれでもあえて横を振り向くことなく、その存在を受け入れませんでした。しかし、しばらくするとフロントガラスに突然、”その実体”が姿を現しました。黒のライダースーツに黒のフルフェイスのヘルメット。ただし、ヘルメットは顔の部分が割れて大きくへこんでいました。ライダースーツも右肩から右腕にかけてこすれたように大きく破れて穴が開いていました。そしてヘルメットの割れ目からは、血まみれの顔の中に白目をむいた男性が、うらめしそうにこちらを睨んでいたのです。
私はこの霊の気配を感じた時点で、いずれ正体を現すことは覚悟していました。私は一瞬のことに驚きましたが、すぐに気持ちを立て直して、マントラを大声で唱え始めました。すると2~3分でこの霊はフロントガラスから消えました。ただ、前を見て車を走らせている私の視線からは消えましたが、依然としてこの霊の気配は感じています。車の近くに人や物がいると警告する赤い三角マークもドアミラーで点灯しています。こんな時は一瞬のタイミングがずれて事故につながる危険性がアップします。私は、慎重にアクセルを踏み込みながら、急いで峠道を駆け下りました。そしてかなり山道を下ったところで、ようやく霊の気配は抜けてくれました。
私はこの後、無事に家に戻りました。ただ、目を閉じれば先ほど目の当たりにしたライダーの顔が嫌でも頭に思い浮かびました。私は、かなりしつこく憑いてきたこの霊について考えていました。この霊は、この霊園に埋葬された者か、峠で事故死した者か、或いはその両方に該当するものなのか、そんなことを考えていました。ただ、時速60キロ以上で急カーブのある峠道で私に付きまとっているのです。普段、私たちが目にしている現実の世界、つまり3次元の世界では到底考えられないことです。霊はいったいどのような次元の世界で存在しているのでしょうか。(2)へ続く