先日、出張鑑定でお会いした方は、「私には不思議な力があるみたいです」と話していました。その方が言うには、子供の頃から”人の死がわかる”というのです。それは他人でも分かりますが、親族などの親しい人であれば、より強く感じるというのです。その感じ方にはいろいろなパターンがあるようで、亡くなる方が生前に夢枕に立つように、寝ている間に夢の中に出てくるケースや起きている時に、不意に胸騒ぎがして亡くなる方を思い出すこともあると言います。他にも亡くなる方の声が聞こえてきて、自分にメッセージを伝えたこともあったそうです。私から見てこの方の霊的な間口はそれほど広くはありません。実際、ご本人もいわゆる”霊体験”をしたことは一度もありません。ただ、知り合いが亡くなるときに、死の時間と相前後してそのことを感じているというのです。

 

こういったケースは、比較的よくあります。”虫の知らせ”とか”胸騒ぎ”という言葉がありますが、人間は本来、未来を感じ取る能力を持っています。ただ、特に産業革命以降の現代では、こういった目に見えない能力は必要としない世の中になりました。二足歩行する人間が、元々付いていた尻尾が退化して無くなったように、必要としない能力は覚醒することなく眠り続けます。そしてほとんどの人たちは自分が潜在的に持っている能力に気付くこともなく、目に見える物だけを見て生きていくようになりました。

 

また、ネガティブな力はポジティブな力よりも強いので、良い未来よりも悪い未来の方がより強く感じやすいのです。本当に魔が差したように起こる偶然のアクシデントは、なかなか感じ取れませんが、その人の人生の中に組み込まれている悪い出来事は、比較的容易に感じ取れます。身内の方や親しい方の死はこれ以上の悲しみはありません。ですから霊的な間口が広くない方でも、死の予兆を感じるという話はよく聞きます。

 

考えてみれば、私もこのような仕事をしているため、今までに何人もの死を見届けてきました。体の具合が悪く、病気の相談をしてくる方はたくさんいます。その中には癌などの重篤な病気に罹り、医者から”緩和ケア”を勧められている方もいました。霊の問題に起因して肉体が病んでいるならそれは私が何とかすることもできます。しかし、肉体に起因して病気になっている方に、医師でない私は完全に無力です。その方を救うことができずに臍を噛む思いをしたことは5回や10回ではありません。

 

人によっては死期が近づいてきたことを察知して、死後に私と会う約束をした方が何人かいました。「死後、肉体が無くなっても魂は肉体から抜けて残ります。そうなったときに必ず、シュンさんのところを訪ねますから、そのときまた私とつながってください」そう言い残して亡くなり、実際に私を訪ねてきた方もいました。これらの出来事を考えても、人間が死の予兆を察知することは、特に卓越した能力を持たなくても何ら不思議なことではないのです。