私はCDレターに一瞬だけ写り込んだ女性を凝視しました。首まで隠れる白の長袖ブラウスを着た女性はうつむいていているため、髪の毛が顔を覆い隠して表情は見えません。ただ、その静止画をじっと見つめているうちに、この女性の体が少しずつ震え始め、ゆっくりと顔を上げていきました。髪の毛の隙間から見えた彼女の口角は明らかに上がっていました。それと同時に聞こえるはずのない彼女の笑い声がしっかりと私の耳に届きました。まさに”貞子”の画像を見ているようでした。
私はここで目線をそらしました。このままこの静止画を凝視していれば、彼女と目を合わせることになります。その瞬間に私はこの女性と霊的に同調します。それが私にとって大きなリスクを受けることが明確だからです。
私はこのわずかな時間ですべての状況を悟りました。この女性は新郎や亡くなった友人の知り合いです。新郎に同年代の知り合いの中で亡くなった女性がいるかどうか尋ねれば、この不浄霊の正体はすぐにわかるはずです。ただ、私がそれをしてしまうと、新郎はこの女性のことを強く意識するようになります。その結果、この不浄霊ともっと強くつながるようになり、悪くすると亡くなった友人のように命を落としてしまう危険もあるのです。この女性の霊は新郎と亡くなった友人のことを強く恨んで死んでいます。その原因が何なのか、それをここで述べることは控えますが、その理由も分かりました。少なくともこの女性の霊は強い恨みの念を抱いているがゆえに、その重さであの世へ上がることは出来ません。本人も現世に執着してまだ生きている新郎をじわじわと苦しめていくつもりでいます。
そう考えると友人の事故は酔って車道を歩いて車にはねられたわけではありません。霊の影響はボーっとしている時に強く出ます。目をしっかりと見開いて覚醒している状態では多少なりとも霊の影響をブロックしているのです。お酒に酔って酩酊している状態は、私から見れば霊的なものに対してまったくの無防備で、強く影響を受ける状態なのです。友人の死がわざわざ披露宴の帰り道で起こったことも、トラックが近づいてくるタイミングで、酔って車道にはみ出したことも、これらは偶然ではなく、すべてこの女性の霊によって意図して引き起こされたことだったのです。
日本人形の髪の毛が人の思いによって伸びたり、目から涙を流すことがあるように、人の思いは物に入り込みます。このCDにはこの女性の強い恨みの念がこもっています。私はこのCDを相談者から受け取り、すぐにお焚き上げをしました。物に込められた思い(=念)は燃やして煙にする中で天へ上り霧散します。
そして、この女性の霊が一日も早く恨みや憎しみから解放されて成仏できるように供養のためのお経を上げて祈りました。そして新郎には、この女性の霊から身を守るためのパワーストーンとお札を渡すように相談者へ頼んだのでした。