私は相談者が巫女に口寄せを依頼している過去に意識を向けてその場面を感じていました。意識を過去のその時間に集中させて、その場面をイメージしていきます。するとぼんやりとしたイメージは少しずつ明確になり、やがてその場面の静止画像が思い浮かび、それがリアルになってきた瞬間、静止画が動き出して動画へなっていきました。

 

私は巫女に相談者のおじいさんが降りてくるのかどうか、巫女の様子をずっと凝視していました。しかし、どれだけ見つめていても、おじいさんの魂が巫女に近づいてくる様子は感じられませんでした。その代わり、巫女の意識は相談者の女性と徐々に同調していく様子が感じ取れました。やがて二人は意識下でしっかりとつながっていきました。

 

私が霊視をするときもそうですが、意識下でしっかりとつながる状態は、つながった相手の目線でその人の記憶にあるさまざまな出来事が、あたかも自分が体験した出来事であるように浮かび上がってくるのです。それは単に目で見えるという視覚の問題にとどまらず、聴覚も味覚も触覚も働いて五感を刺激して感じ取ることができるのです。ですから相談者の女性が体験してきた出来事を巫女は自分の体験としてリアルに感じ取っていたのです。

 

これはたまたまテレビで目にした”降霊”の番組を見て、何度か感じたことと同じでした。霊媒となっている人はあの世から誰かの魂を呼び出して自分に憑依させているのではなく、相談者と同調することで、相談者の記憶にある過去の出来事を喋っているのです。ですから私に相談した女性が、おじいさんの口調でしゃべる巫女に驚いたのは、おじいさんの魂が降霊したのではなく、この女性の記憶にあるおじいさんの口調を巫女が感じ取ってしゃべっていたのでした。おじいさんと自分しか知らない過去の出来事を巫女がしゃべったのも、この女性の記憶に刻まれた過去の思い出を感じ取ってそれを口にしたのです。ですから巫女が口にしたおじいさんの言葉は、相談者の意識の中にある不安や願望をそのまましゃべったものなのです。

 

相談者が「投資で儲けたい」と心の底で強く願っていれば、その思いが巫女の言葉となって伝えられ、家族や親族との人間関係に不安を感じていれば、それも巫女の言葉として伝えられるのです。ですから投資で損をしたのは、投資が成功する時期やタイミングでないのに、自分の願望だけで投資を実行したからに他なりません。それでは投資は成功するはずがありません。家族や親族との人間関係が破綻したのも、関係が壊れることを恐れた結果、その不安な未来が意識に刻み込まれてしまい、自分が無意識にしている言動が、人間関係を壊すような方向へ向いてしまったからなのです。

 

私はこのような状況を相談者に説明しました。彼女が巫女から聞いたおじいさんの言葉に縛られる理由は何もないのです。自分自身の中にある未来に対する不安感が、巫女の口を通して発せられていたのでした。