口寄せとは、死者の霊や生霊を霊媒となる人が呼び寄せて、憑依を受けた形で言葉として語るものです。東北地方の”いたこ”や沖縄の”ゆた”が有名ですが、他にも関東地方に”梓巫女”と呼ばれる巫女もいますし、神霊を呼び出して神の言葉を語るものもあります。先日、私に相談してきた女性は、もう何年間も口寄せを頼んでいる巫女の言葉を信じています。この巫女の口寄せではいつも亡くなった自分のおじいさんを呼び出してもらい、その言葉の通りに行動してきたと言います。おじいさんはずっと自分をかわいがってくれていたので、おじいさんの言葉にしたがえば、きっと良い方向へ進むと信じていたのです。

 

ただ、最初の頃は口寄せの言葉通りに行動して物事が上手く進んだこともありましたが、最近ではその言葉を信じたおかげで投資で大損したり、家族や親族との関係が悪くなってしまったりして、人生がめちゃくちゃになってしまったと言います。そこで私にその巫女のことを見てもらい、巫女の実力や人間性、また回答の真偽を判断してほしいというのです。

 

私からすると、投資の判断を巫女にゆだねるということ自体が間違っています。そのことをまず伝えましたが、巫女の言葉の中に引っかかっている内容がいくつかあって、それがずっと自分を苦しめているというのです。彼女が言うには、巫女を通して話す、おじいさんの口調は、まさに自分の記憶にあるおじいさんの話し方そのもので、話の内容もおじいさんが生きていたころの事実と符合するというのです。だからこそ巫女の口から発せられる言葉が、彼女の胸に突き刺さって抜けないのです。

 

私は基本的に霊能者を含めて自分以外の人がやっていることを批判することはしません。批判しないというよりも興味がないのです。自分の身の回りで起きていることの多くは自分の行動(=思考や意識や言動)が引き起こしています。ですから自分の人生を良くしようと思えば、まずは自分が良い行動を取らなければなりません。よく何か悪いことが起こった時に他人に責任転嫁する人がいますが、それを繰り返していてもその人の人生は決して好転することはありません。なぜなら責任転嫁することで、自分の行動を反省したり、改善する機会を自ら失っているからです。行動が良くならない中で未来が良くなることはないのです。

 

ですから私は自分の状態を良くすることには常に注意を払っていますが、他人の行動についてはまったく関心はありません。そういった意味で、この巫女について本物なのか偽物なのか、判断してほしいという依頼は私からすると、気の進まない相談でした。ただ、投資の損得はともかく、この女性の心を縛り付け苦しめている言葉については、その真偽を判断して率直にお伝えしようと思いました。

 

まず、口寄せという作業が私からすると、自分の感覚とは離れています。決してその作業をすべて否定するわけではありませんが、私は人間は死んで肉体が亡くなった後、魂はしばらく現世にとどまった後、人生を総括してあの世へ上がります。そこで生きていた時の記憶を消されてやがて来世へ生まれ代わります。つまり”輪廻転生”は確実に行われていると考えています。そう考えることによって符合する事実が世界中に数多くあるのです。ですから何十年も前に亡くなったおじいさんの魂が、まだ現世にとどまっていて、巫女に呼び出されているという感覚が私には分かりません。(2)へつづく。