人の喜怒哀楽は表情に出ます。ですからその人の表情を見ればその人の今の状況はある程度想像はつきます。また、長い期間にわたってずっとその表情を続けていると、それは顔に刻み込まれます。いつも笑顔で明るく生きている人は、非常に温和な顔になりますし、いつも不平不満ばかり言って物事に批判的な人は、口がへの字に曲がって怖い顔になります。私はたくさんの皆さんとお会いする機会がありますが、最初にその方の顔(=造作ではなくて表情)を見ただけで、その方の状況はかなりリアルに感じ取れます。

 

これは何も人間に限ったことではありません。動物にも表情はあります。ペットの犬や猫を飼っている人は、ペットの表情が喜怒哀楽によって変わることがわかると思います。私は動物は大好きで、長い間、猫を飼っていました。猫の顔にも表情はあって、喜んでいるのか怒っているのかは顔を見れば分かります。さらに言うとこれは生きものに限ったことではありません。私が先日行った出張鑑定先で見せられた”人形”は20数年前とは明らかに違った表情になって、とても悲しそうな顔をしていました。

 

私がお会いした女性は、子供の頃に両親からプレゼントされた人形を嫁ぎ先まで持ってきていました。子供の頃に貧しかった家計の中から、ご両親はお金を貯めて可愛い日本人形を誕生日にプレゼントしてくれたそうです。そしてこの女性は、この人形に名前を付けていつも抱っこして、人間のように話しかけて、夜は抱きかかえながら眠っていました。ただ、彼女が大切にとっておいたこの人形が入っていた箱に描かれた顔は、今の人形の顔とは別人のように変わっていたのです。

 

よくテレビで日本人形の髪の毛が伸びたとか、目から涙を流したといった話があります。私が行方不明者を探すとき、そのすべてではありませんが見つけ出すことができるのは、その人の愛用品にはその人の念(=思い)がこもり、そこからその人の波長を感じ取っているからです。波長を感じ取れれば、それをたどっていくことができます。

 

この女性が子供のころからずっと家族のように語り続けてきたこの人形には、彼女の思いが詰まっています。そうなるとこの人形の表情が変わることは、人形の髪の毛が伸びたり、涙を流すのと同じように十分起こりえることなのです。彼女によると成人してからもいつも近くに置いていたこの人形も、結婚してからは箱にしまってずっと押し入れの中に閉じ込めてしまっていたといいます。それが何年かしてたまたま押し入れで見つけて、外に出したところ表情が変わっていてびっくりしたということです。

 

私はこの女性に「箱から出して、いつもあなたが見えるお部屋の中においてください。人形はものですが、生き物と同じように気持ち(=思い)は伝わります。真っ暗闇の誰もいない世界に一人で放っておかれれば悲しくなるのは当たり前です。あなたの顔が毎日見れて、ときどき声をかけてもらえれば、きっとまた表情は変わってきます。もしまたこの人形の表情が元の明るくかわいい顔に戻ったら写メを撮って送ってください。その時の人形の思いをお伝えします」と話しました。(2)へ続く。