私はさらに彼女に話しました。「今の会社に残った場合、今の苦しい状況は早ければあと5か月、遅くても7か月以内には改善されます。副店長の手腕に期待した社長ですが、社長の望んでいる数字はとても高いので、この副店長も見切りをつけられます。そのときに、お店のスタッフと本社の関係が悪くなり、スタッフのモチベーションが下がります。その状況を見て、社長はあなたに任せた方が良かったと改心します」
彼女は涙をぬぐいながら私の話を聞きました。
人は苦しい状況のときに、その終わりが見えないとすべてが真っ暗闇になって辛抱することができません。ただ、”いつになれば変わる”という終わりが見えていれば、苦しくてもその期間を堪えることができます。そして私は今、一日一日が辛くて堪えられない彼女に話しました。
「あなたは、いつも高いモチベーションを持って仕事に臨んできました。あなたのモチベーションが高いのに、それを発揮する場所を与えられない場合、あなたに対して期待の低い会社とモチベーションの高いあなたの間に大きなギャップ(=差)が生じます。こういった場合、温度の高い方が低いものに対して不満を抱えて気持ちを腐らせます」
「あなたの不満をなくすためにはこのギャップ(差)をなくすことがポイントです。気持ちの熱い人と低い人が一緒に仕事をする場合、気持ちの熱い人に不満が出ます。だったらあなたのモチベーションを下げてこの隔たりを無くしてください。今は”副店長のお手並み拝見”と思って彼の言うことだけを素直に実行してください。あえて敵対する必要はありませんし、改善のためのアイデアを提供する必要もありません。毎日、黙って言われたことだけをやって帰宅すればよいのです。モチベーションを下げることによって、きっと気持ちは楽になります。気持ちが楽になれば、半年という時間はあっという間に過ぎていきます。そして半年経てば状況は一転します」
彼女は私の話に納得して、あと半年間、今の会社で頑張ってみると言って帰りました。苦しい状況の時にそこから逃げたくなるのはある意味当然のことです。誰だって苦しい状況は避けたいと思います。ただ、一番のポイントは、逃げた後の未来が、今までよりも良くなるのか、悪くなるのか、そこが重要なのです。苦しみから逃げた結果、今よりももっと苦しくなることだってあるのです。苦しさから逃げることが苦しさから解放されることになるとは限らないのです。今の苦しい状況を改善しようと思うときに、あえてモチベーションを下げることで、苦しい今をやり過ごして改善の時を待つこともあるのです。