以前はよく、うつ病の人に「頑張って」と言ってはいけないといいました。頑張って疲れ切ってしまった人に「頑張って」と声をかけることは、さらにプレッシャーを与えることにしかならないからです。ただ、私が毎日、何人もの方の相談に応じているない中で、「頑張ってください」とか「しっかりと考えてください」というような言葉を発することが、ここ何年もの間、めっきりと減ったように思います。

 

通勤電車に乗れば、耳にイヤホーンをつけて英会話やMBAなどビジネス系の勉強をしている人をよく見かけます。会社にいる間は仕事に集中して、通勤の時間も惜しんでスキルアップを図る。また、電車の中でモバイルを活用して移動時間に仕事をこなしている人もいます。向上心を持つことや時間を有効に遣うことにはもちろん異議はありません。ただ、私に相談される方たちも、息を抜く時間を作らずに、頑張り続けてきた結果、心が折れてしまったり、折れかかってしまっている方が増えていることも確かなのです。

 

私たちは子供のころから時間やお金や労力は有効に遣うことが良いことだと教えられてきました。目標へ向けて努力を続けていくこと。頑張り続けることは尊いことなのだと自然に刷り込まれてきました。その結果、心が疲れていても悲鳴を上げていても、歯を食いしばって頑張り続けてきたのです。

 

ただ、ここで注意しなければならないのは、”バランスを保つこと”です。私は努力や頑張りを否定するものではありません。ただ、1年中、常にオン状態で進んでいては機械だって壊れてしまいます。人間よりも強い機会でも、時々休ませたり、メンテナンスをする時間が必要なのです。人間がそれを怠ってただ、がむしゃらに進み続けていれば、いずれ心が折れてしまうことは当然のことなのです。

 

私はこの仕事についてから休みというものを1日もとっていません。もう、10数年もの間、1月1日も5月5日も8月15日も12月31日も仕事をしています。ですから泊りがけで出かけたのは2年前に出演したテレビ番組のロケで五島列島の福江島に一泊したこと。それも日帰りの予定が、雨で機材のやり繰りがつかずに飛行機が欠航となったことで、たまたまホテルに泊まることになったのです。あとは10年ぐらい前に1日では処理できない量の仕事が入り、鳥取のホテルに一泊したこと。あとは仕事で行った奈良県で仕事が終わった時間が新幹線の最終電車に間に合わないでホテルに泊まったこと。この十数年間でそれだけです。個人旅行も家族旅行ももう何年行っていないのか思い出せません。通常は長崎でも鹿児島でも旭川でもすべて日帰りで仕事をしています。宿泊してしまうと翌日の午前中はつぶれてしまします。深夜でも帰宅できれば、翌日は朝から仕事を入れることができるからです。

 

一見すると自分の言っていることと、まさに真逆な状態で10年以上も働き続けているように見えますが、実は私は忙しい中にもリフレッシュする時間を上手く取り入れながら心のバランスを保っています。(2)へ続く。