この場所は、確かに162名もの方が亡くなった場所ですから、空気は異常に重く、それでいた寒々としていました。それはいわゆる”心霊スポット”と言われる場所と同じでした。ただ、それではこの場所に162体の魂が成仏できずに残っているのかと言えば、そうではありませんでした。ネットを見ると、「空中衝突によって一瞬で死んでいるので、自分が死んだことを認識していない魂が…」といった記載が数多く見られます。しかし、実態は上空8500メートルで全日空機は自衛隊機と空中で衝突しましたが、それは衝突というよりも”接触”と言った方がしっくりときます。
事実、自衛隊機はその後、しばらく飛行を続けてから、パイロットはパラシュートで脱出していますし、全日空機も高度8500メートルから高度5000メートルまで急降下しながらも飛行しています。そこで空中分解したのです。ですから乗客たちは、3500メートルも降下する間、「大変なことになった」という恐怖感や絶望感を十分に感じていたのです。中には空中分解して空中に放り出された後、しばらくの間、意識を残していた方も何人もいました。ですからほとんどの乗客・乗員は、自分がこれから死ぬことをはっきりと認識しながら死んでいたのです。私が慰霊の森に立って最初に頭に浮かんだのは、そんな恐怖に歪んだ人たちの顔や様子でした。
人の魂は亡くなった後、しばらくの間は現世にとどまります。そして生まれた場所から死んだ場所までを何度も辿りながら、自分の人生を総括していきます。そして、”自分にとっての人生とは何だったのか”。それぞれが、自分なりの答を出したのちに、あの世へ上がっていき、生きていた時の記憶を消されて来世へ生まれ変わります。いわゆる”輪廻転生”をします。私は生きている人と同調して霊視をすることができます。また、人間の波長は生きている間も死んだ後も変わることはありません。(まれに例外はあります)ですから亡くなった後に、同じ波長でアプローチして故人とつながることもできます。ただ死後、ある程度時間が経過すると、突然、個人とはつながることができなくなります。それはその魂が、現世を離れてあの世に上がったからです。いわゆる”成仏”したのです。この期間は人それぞれで異なりますが、通常は49日ぐらいから3年ぐらいです。
ですから今から47年前に亡くなった魂は、そのほとんどがあの世へ上がり、現世にとどまることはありません。強い恨みや憎しみなどを抱えて亡くなった方、或いは自殺をした方、他にも何か強く現世に執着する理由を持っている方は、その思いの強さ=重さゆえにあの世へ上がることはできずに、50年経っても100年経っても現世にとどまっていることはあります。ただ、今回のような不幸な事故の場合、普通の死よりもあの世へ上がるのに時間を要しますが、それでも47年経過しても、恨めしくこの場所にとどまり続けることはないのです。
私は162名の方々が亡くなった中で、この場所にまだ、とどまっている魂はわずか数体を感じるのみでした。そして私はその数体の魂が1日も早く執着を捨ててあの世へ上がり、きっと来世では幸せな人生を生きることができるように何時間もこの場所で祈り続けました。私の伯母さんの魂も、もうこの場所にはいませんでした。魂の定めにしたがってあの世へ上がり、輪廻転生のプロセスを歩んでいるように感じました。不幸にして突然命を絶たれた方々のご冥福を心からお祈りいたします。