私が感じていたのは、医師がお嬢さんに大量の安定剤を注射している光景でした。お嬢さんからすれば、体にも精神にも何ら異常はありませんから、早く退院したくて大声で喚くこともしばしばです。医師はそのたびに安定剤を注射してお嬢さんを黙らせます。大量の薬でボーっとしたお嬢さんはフラフラになってベッドに横たわっています。しばらく時間が経って薬が抜けてくるとお嬢さんはまた、退院したくて病室で暴れます。暴れれば拘束衣で体を動けなくしたり、暴力をふるったり、セクハラ的な行為を受けている状況も浮かびました。これ以外に何か治療している様子は何も感じられないのです。投与している薬は興奮している時に落ち着かせる安定剤だけです。こんなことを続けていてはお嬢さんは本当におかしくなってしまいます。

 

お母さんは私のアドバイスにしたがって何度も病院を訪れました。強く面会を申し入れているため、時々お嬢さんと面会できることもありました。その様子をお母さんに尋ねると

「何か、ボーっとしていて普通に会話ができません。確かに精神的におかしくなっているようです」

と答えました。

私はお母さんに

「それは薬による影響です。面会する前にお嬢さんは薬を注射されています。お嬢さんの病状が悪くなってそうなっているのではなく、この病院で行われていることをお母さんに伝えられたくなくて頭が働かない状態にさせられているのです」

そう伝えました。今のようにネットに評価が書きこまれるような時代ではありません。閉鎖的な病院の中で行われていることは、内部告発でもない限りは表に出ることはなかったのです。

 

こんなやり取りが3か月ぐらい続きました。ご両親は一向に良くならないお嬢さんの状態がさすがに心配になってきました。私の言葉もご両親の心に少しは響いたのかもしれません。ご両親はお嬢さんを大学の附属病院へ転院させることを決めて、半ば強引にこの病院を退院させたのです。

 

そこの病院でもお嬢さんは時々暴れました。それは憑いている霊の影響で、肝心な時に自分の首を絞めるような行動をとらせてしまい、自分を追い込む方法へ導いているからです。ただ、大学病院ではお嬢さんの行動について、「明確な原因は不明である」と診断されて、安定剤を処方されただけですぐに退院になりました。私はすぐに自宅に呼ばれて、お嬢さんの除霊を行いました。お嬢さんは完全に本来の自分を取り戻して、その後はご実家で穏やかに過ごしています。こんなことがあってから、この方は何か問題があると私に相談するようになったのです。

 

ちなみにこの精神病院は、それからしばらくして閉鎖されました。今は建物は取り壊されましたが、解体されるまでは地元では有名な心霊スポットになっていました。単に精神病院に対する悪いイメージが心霊スポットを作ったのではなく、現実に多くの人たちの悔しさや怨念が渦巻いている場所ですから、おのずと不浄霊も数多く集まってきたのです。