まず、屋外での作業ですから暑さとか寒さで閉口することはしばしばあります。東北地方の旧家の周囲に結界を張ったときには、真冬ということもあって雪が1m以上も積もっていました。その雪をスコップで取り除き、地面を出すまでが一苦労でした。そして地面に穴を掘って特殊なカミナリ水晶を埋め込んでいくのですが、大きなお屋敷で家の周囲に10本以上のカミナリ水晶を埋め込まなければなりませんでした。寒さの中で除雪と穴掘りを10か所以上やるのは、それだけでくたくたになります。そしてすべての穴にカミナリ水晶を埋めたあとに、その場で結界を張るマントラを唱えるのですが、寒さで歯がガタガタ鳴って、スムーズにマントラを唱えられないのです。時間をかけて結界を張りましたが、真冬に外で長時間の作業はかなり堪えました。
逆に埼玉県の高速道路の工事現場で結界を張ったときは真夏で頭がくらくらしたのを覚えています。高速道路のジャンクションを作る工事現場でしたが、広い工事現場の中に所有者不明の小さな古い神社があって、管理する人もなくすたれて倒れかけていました。現場の監督は許可を得て、この古い神社を壊しました。その時には他の神社の神主さんに来てもらって、現場でお祓いも済ませていました。ただ、それからこの現場では不思議な事故やトラブルが立て続けに起こり、工事はどんどん遅れてしまいました。困った監督は人づてに私のことを聞いて、工事が無事に終了するように「力を貸してほしい」と依頼してきたのです。
現場に立つと眷属に囲まれて古い時代の神職が姿を現し、神社を壊されたことを非常に怒っていました。この怒りを鎮めるのは並大抵ではできません。他の神社の神主が来て、自分たちを祓おうとしたことも怒りを増幅させていました。また古い神社で取り巻いている不浄霊の数も多いので、私はこの神社の神職の魂をあの世へ上げるとか、怒りを鎮めるよりも、工事現場の敷地に結界を張って、工事に悪影響が出ないようにすることにしたのです。
ただ、高速道路のジャンクションですから工事現場の周囲は何キロにもなります。私は監督の車で移動しながら、何十本というカミナリ水晶を埋め込んでいきました。穴を掘って埋め込むだけで1日がかりの作業になりました。真夏のうだるような暑さの中で、水分を補給しながら作業を進め、最後に敷地の中で結界のマントラを唱え終えた時には、倒れるくらいに消耗したのを覚えています。
また、別の意味でも屋外の作業は気を遣います。例えば家やマンションの周囲にカミナリ水晶を埋める作業は、道路を通る人から見て、どうみても怪しく映ります。中には穴を掘ってカミナリ水晶を縦に差し込み、水や塩を入れる一連の作業を横でじっと見ている人もいました。何をやっているのか尋ねられることも何度もあります。特にさまざまな事情から夜や深夜に作業する必要があるとき、私の行動は完全に不審者に見られます。私も悪いことをしているわけではないのですが、警官やパトカーが通れば、作業を中断して通行人のふりをしたりします。
こんな状況の中で今までにもう何百という結界を日本中に張ってきたのです。