先日、出張鑑定でうかがった家には大きなお札が掲げてありました。ご主人が作ったという手作りの神棚の中央には伊勢神宮のお札があり、向かって右側にはこの土地の氏神様のお札、そして左側には弁財天のお札が貼ってありました。また、お札の手前にはお水とお米と塩が置かれていました。このお札の掲げ方について私は「これで良いのでしょうか」と尋ねられました。私は「大丈夫です」と答えました。天照大神を祀る伊勢神宮は日本の神社の総帥ですから、神棚では中央に配置します。ちなみに伊勢神宮で天照大神を祀るのは内宮で外宮では豊受大御神を祀っています。他にも14の別宮、43の摂社など125の官社を含めて伊勢神宮と呼びます。そしてその土地を守る神は氏神と呼ばれ、日本中どこの土地にも氏神様はいます。各都道府県には神社庁というお役所がありますので、そこに電話をかけて、自分の家の住所を言えば、その土地の氏神様はすぐに教えてもらえます。あとは自分が崇尊する神社のお札を左側に配置します。これは表から裏にこの順番で重ねることも有効です。お供え物は他にも榊などがありますが、基本はこの形でOKです。
この神棚の配置について私から「大丈夫です」と聞いた方は「よかった、これでご利益がありますでしょうか」とさらに質問してきました。私はこの問いには苦笑いをしながら「どうでしょうか」とあいまいに答えました。本来なら笑顔で「大丈夫です、きっとご利益があります」と言ってあげたかったのですが、そう言えなかったのには理由があります。その理由は一言でいうとどのお札からもパワーを感じられなかったからです。
私も霊符や神符といったお札の類を作っています。ただ、これらを作るときは製作にふさわしい日にちを選び、一文字づつ強い念を込めて私が書いていきます。だからお札にはパワーが宿り効果が出るのです。私がこの家で見たお札はどれも紙に印刷されたものでした。印刷の機械には念はこもりません。ただ、文字が印刷されるだけです。機械で印刷された紙をアルバイトの人が木に括り付けたものに何かの効果があるとは私には思えません。
神社で行っているお祓いもそうです。20~30人が正座している前で神職が大麻(おおぬさ)を振って悪いものを祓います。ただ、私が除霊などをするときは、祓う人に対して有効なマントラをさまざまなお経やご真言などの中からチョイスします。また、悪さをしている不浄霊に対しても有効なマントラを選んでぶつけていきます。だから有効なのです。したがって同じ人でも憑いているものが違えば唱えるマントラは異なります。それが20~30人に対して同じ祝詞をあげてそれで悪いものを祓うというのは私の感覚としては理解できません。人様の行っていることですので部外者の私には分からないこともあります。ですから批評批判はできませんが、有効な理由が理解できないのです。
そういった意味では私の行っている作業は薬剤師が薬を選ぶような作業だと考えています。具合が悪い人を検査して、風邪が原因なら風邪薬を出しますし、消化不良なら消化薬を処方します。除霊はそんな作業ですし、霊符や神符では如何にきちっと私の念を込められるのかがポイントになります。