私の両親の墓は神奈川県鎌倉市にある鎌倉霊園にあります。都内から車で行くときは横浜横須賀道路の朝比奈インターチェンジで降りて、金沢街道と呼ばれている県道204号線で朝比奈峠を越えていきます。鎌倉霊園の正門前のバス停は鎌倉霊園正門前(太刀洗)と言います。太刀洗の名前の由来は、1183年に源頼朝の命を受けた梶原景時が謀反を企てたとして上総介広常を斬り殺した時、刀についた血糊をこのあたりの小さな滝で洗い流したという言い伝えからついたものです。朝比奈峠は1333年に新田義貞が鎌倉に侵攻したときに、鎌倉市内を守る東側の天然の要害になったところです。したがって何万という武士がこの攻防戦で亡くなっています。今は撤去されましたが、鎌倉霊園の正門前にあった電話ボックスでは、何人もの人が幽霊を目撃していていました。さらに近くには執権だった北条高時の”腹切りやぐら”もあります。この腹切りやぐらはハイキングコースの中にありますが、最近では鎌倉最恐の心霊スポットと言われています。朝比奈峠はこのような場所にある道幅の狭い峠道ですから、昔から何人ものライダーが事故で亡くなり、ガードレールをみると、生々しい傷跡が無数に残っています。

 

私は湘南方面から横浜へ向かうときは、国道1号線や鎌倉街道を使い、特に夜は朝比奈峠は通らないようにしています。その理由はもちろんここで何度も霊体験をしたからです。

 

この辺りでは武士やその一族の不浄霊が多いはずですが、時代がかなり古いので、ほとんどの不浄霊は霊体としての形が壊れています。鎧甲冑は身にまとっていても、その中身が見えないことがよくあります。私はむしろこういった不浄霊に呼び込まれて、命を落としたライダーの霊を数多く見かけました。

 

さっきまで何もいなかった車の後ろから、ヘッドライトが近づいてきます。それもものすごい速さで接近してくるのです。私にはバックミラーに映るライトの明かりがしっかりと目に入り、むしろまぶしさを感じています。その光源が私の車の直後まで迫り、ぶつかると思った瞬間、消えて無くなりました。

 

また別の不浄霊は後ろから接近して、私の車を抜かしていくときに、わざわざ運転席のすぐ横を並走して、こちらに顔を向けて睨んだり、笑いかけたりして走り去っていきます。私の車をすり抜けていったバイクもあります。

 

彼らにとってそのオートバイは非常に大切なものなのでしょう。ですから死んだ場所にただとどまっているのではなく、死んでもなおバイクに乗って走り続けているのです。