私は以前、過去に犯した罪におびえた方から相談を受けました。その方は40代半ばの会社員で結婚していてお子さんも二人いて、一見するととても幸せな家庭を築いていました。ただ、その方は20代の前半までかなりすさんだ生活をしていました。そして悪い仲間と強盗事件を起こして逮捕され、約4年間刑務所に入っていました。ただ、刑務所にいる間にさまざまな本を読み、自分を見つめ直し、心から改心して出所しました。そして出所後は、悪い仲間との縁を断ち切るために、地方都市へ引っ越して、そこで就職した会社で一生懸命に働きました。そして仕事ぶりは評価されて、今では管理職となり、たくさんの部下をまとめる立場になっていました。

 

彼は自分が刑務所に入っていたことを入社時の面接で社長さんに話していました。ただ、社長さんは彼が心から改心していることを見抜き、「そのことは自分だけの胸にしまっておく」と言って、彼を採用してくれました。そんな社長さんへの感謝の思いもあって、彼は頑張って仕事に打ち込んだのでした。

 

そんな頑張り屋で仕事熱心な彼に、好意を持ってくれる女性が現れ、彼は結婚したのでした。結婚してからの彼は、益々仕事に励み、妻や子供たちも大切にする優しい夫であり父親となりました。子供たちは彼を父親として尊敬し、妻は心から彼を愛していました。

 

ただ、結婚に際して、彼は自分が刑務所に入っていたことをどうしても妻には切り出せませんでした。もし、その話をすれば、きっと嫌われてしまうと、そのことを恐れていたのでした。それは結婚してからも同じで、今に至るまで、彼はそのことを妻や子供たちに話すことはできず、ずっと隠しています。

 

彼の中ではいつか自分が前科者であることが家族に知られるのではないか。幸せな時間が続けば続くほど、彼はいつもひやひやどきどきしながら暮らしていました。誰よりも愛する家族にはそのことは絶対に知られたくないと彼は思っていました。

 

ただ、彼のうしろめたさは日に日に大きくなり、数年前から慢性胃炎に悩まされ、医師からはストレスが原因であると言われていました。仕事熱心な人間でしたので、周囲は「仕事のストレス」と考えていましたが、本当は前科者であることを隠し続けているストレスに体が悲鳴を上げていたのでした。

 

彼は私に正直に過去や今の状況を話した上で尋ねました。「私が前科者であることはいつか家族に知られるでしょうか?また、知られるとすればその時期はいつでしょうか?」彼にとっては本当に切実な問題でした。私は神経を集中して彼の未来を霊視しました。私が観た彼の未来の中に、家族にこのことが知られて落胆している様子は全く感じられませんでした。ただ、よくよく観ていくうちに、ただ、知られないのではない違った感じがしてきました。

 

「奥さんはすでにこのことを知っている」

そんな感じがしてきたのです。そこで奥さんの過去も霊視してみました。する結婚に際して、奥さんのご両親が興信所を使って、彼の身元調査をしていたことを感じました。奥さんも奥さんのご両親もそのことを承知した上で、今まじめに働いている彼のことを信用して結婚に踏み切ったのでした。そして彼が気に病むことを心配して、知っていても彼から言われるまでは知らないふりをしていたのでした。

 

私はこのことを彼に伝えました。彼は大変驚くとともに声を上げて泣き出しました。今までずっと隠していた辛かった時間や奥さんや奥さんの両親の優しさが心に沁み込んだのです。

 

奥さんや奥さんの両親の判断は大正解でした。彼は私からこのことを聞かされた後も、前科のことは家族に話していません。ただ、今までよりもさらに家族を大切にして仕事にも打ちこみました。そして彼の慢性胃炎はいつのまにか治ったと連絡がありました。