学生時代、私は一般科目よりも音楽や美術の授業は楽しみにしていました。ただ、周りを見ると受験に燃えている”ガリ勉くん”にとっては、一般科目の補習時間になっていましたし、やる気のない学生には、休憩時間、或いは睡眠時間になっていました。
確かに芸術科目は入試には必要ありません。ですから音大や美大を目指す一部の学生を除いて、ほとんどの学生は音楽や美術を勉強する意味を感じていなかったように思います。
芸術科目の勉強が必要だという専門家は、”豊かな人間性を育むための情操教育”或いは、”人間の創造力を養う必要性”などを理由に取り上げています。確かにそういった面もあると思います。ただ、私からすると、芸術=心が揺れる=感動するということは人生にとってもっと明確に意味のあることなのです。
人生ではずっと良いことばかりが続くことも悪いことばかりが続くことも普通はありません。人生には流れがあって、良い流れの時も悪い流れの時もあるのが当たり前です。
良い流れの時は物事は上手く進んでいきますので何ら問題はありません。逆に悪い流れが続けば、早く流れを変えて良い状態にしたいと誰もが思います。それでは悪い流れが良い流れに代わる転換点では何が起こっているのでしょうか。そこでは流れを変えるための”きっかけ”が訪れています。このきっかけがないと流れは転換できませんが、このきっかけは自分の努力で持ってくることはできません。
具体的には誰かと出会うことであったり、誰かと話すことであったり、良い本を読むことであったり。それによって心が動いた瞬間に流れは変わるのです。同じようにきれいな景色を見たり、素晴らしい音楽を聴いたり、美術作品に触れて感動した瞬間に流れは変わります。
ですから芸術の世界に深い造詣を持つ人は、人生の流れが悪くなった時に、それを転換するための引き出しの数が多いのです。だから芸術は入試には関係なくても人生には大きく関係してきます。幸せな人生を送るための大切なキーワードとなっているのです。