最近、臨死体験をしてから、いろいろなものが見えたり感じたりするようになったという方とお会いしました。ご本人はこの状態について、「何か脳に障害が残ってしまったのではないか」と、とても心配していました。

 

こういった話は私もよく耳にします。私は臨死体験によって、霊的に開いた状態になることについて次のように考えています。

 

まず、霊的な能力=霊感や直感といったものは、元々人間が本来持っている能力です。それは程度の差こそあれ誰にでも備わっています。ただ、尻尾のついていた猿が人間に進化していく過程で、人間は2足歩行をするようになりました。そうなると尻尾は邪魔になるだけで必要ありません。必要がないものだから退化して無くなったのです。

 

それと同じように、太古の昔の人間たちは霊的にも開いていて、霊感や直感は生きていく上で必要なものでした。たとえば狩猟時代に村の男たちは全員で協力して狩りに出かけます。現代のようにレーダーやデータもない中で、わずかな経験則と直感を頼りにして獲物のいる場所を探して追いかけました。その時、狩りへ向かう方向が間違っていたらどうなるでしょうか。獲物は見つからず、食糧の無くなった村は全滅していたでしょう。

 

人類が消滅せずに、人間の命が現在まで脈々とつながってきたということは、人間には霊感や直感が元々備わっていたからだと思います。

 

ただ、人類の歴史が長くなり、さまざまな知恵や経験が積み上げられてきます。そうなると霊感や直感に頼って生きていくよりも、知識や経験に基づいて物事を判断した方が、確実に命をつないでいけるようになります。特に産業革命以降、物が大量に生産されて社会が豊かになっていくにしたがって霊感も直感も必要ではなくなっていきます。ですから現代を生きる多くの人間にとって必要の無くなった霊的な感覚は蓋を閉じて眠ったような状態になったのです。

 

したがって今を生きる同じ人間でも、アフリカや世界の未開の地に暮らす部族などでは、未だにシャーマンと言われる霊能者がいて、シャーマンのお告げによってそのコミュニティーの文化や宗教観が形成されています。

 

裏返して言えば、近代的な技術革新や思想・文化は、私たちに豊かさを与えてくれますが、それと引き換えに、人間が本来持っていた霊的なパワーを封印してしまうことになったのです。(2)へ続く