”人の心は無限である”と言う人がいます。心の広さを面積や体積で数値化することはできませんが、確かに無限と言ってよいほど、さまざまなものを同時に感じることはできると思います。それほど広い器を持つ心であっても私は”心は有限である”と考えています。
人によって心の器の大きさは異なります。心の広い人もいれば狭い人もいます。ただ、いずれにしても心の大きさは無限に広がっているのではなく決まった大きさしかありません。
悪い彼氏と付き合っていた女性がいます。彼女に暴力を振るい、仕事もしないで彼女からお金をせびってばかりいるような男性です。やっとのことでこの男性と別れた彼女は、早くこの男のことを忘れて新しい恋愛をしようと思っています。ただ、新しい男性と出会うたびに、心のどこかで元彼のことを思い出してしまいます。新しく出会った男性と会っている間でも、どことか元彼と比較してしまいます。やっとのことでひどい元彼と別れたのに、心の中にはいつまでもこの元彼が居座っていて一向に忘れることができません。
「いったいどうしたら私はこの元彼を忘れることができるのでしょうか」
そんな相談を私は何度も受けたことがあります。
もちろんその原因が霊的なものであるなら、それを祓ったりブロックすることが必要です。ただ、霊的な問題がまったくないケースでもこういった問題はたびたび発生します。
私はまず「元彼のことを忘れようと思わないでください」と話します。「忘れようと思っている時間は、あなたの心は元彼とつながっているのです。それでも忘れようと思えば思うほど、心の底では『忘れられない』と唱えているのと同じなのです」と答えます。つまり、忘れようと思うこと自体が逆効果なのです。
そして、「あなたの好きなこと。興味のあることで、今までやってこなかったことを日常生活に取り入れてください」と伝えます。基本的に今までと違う未来を求めるなら、今までと違う行動を取らなければなりません。”良くなりたい”と思うだけで、今までと同じ行動を続ける先には、今までと同じ未来しか訪れません。
今までと同じ行動の中でも、自分の好きなことであれば、やっている自分も楽しいし没頭できます。もし、1時間でも没頭できれば、元彼のことを考える時間は1時間分減ることになります。その分、気持ちも1時間分軽くなります。そうやって元彼のことを考える時間を少しずつ減らしていくとともに、新しく取り入れた趣味の時間が、心の器の中から元彼の存在を押し出していきます。
そうやって元彼の存在が小さくなった時に、初めて意識は別の男性へ向かい始めます。そして新しい彼の存在が心の中で大きく膨らんだ時に、元彼の存在は心の領域から押し出されて霧散していきます。
このような手順を踏まずにただ、「忘れよう」と思い続けると何年、何十年経っても元彼は心の中にとどまり続け、そこから解放されることはありません。
心の大きさは有限です。ですから何かを変えようとするときには、今までの日常生活にない新しい時間を取り入れることで、忘れたいものを心から押し出すことができるのです。