私のサイトを運営している会社には、私以外にもう一人、霊的感覚の鋭い”ダイスケ”という人間がいます。ダイスケは人の特に前世を詳細に感じることができます。私は自分の前世については断片的に見えたり感じたりできますが、前世を全体的な流れとして時系列で捉えることはできません。私が感じ取れるものはさまざまな場所や人の断片的な景色です。ですから私が前世で何をやってどのような人間関係を作ってきたのかは自分ではわかりません。
あるときダイスケと話している時に、私の前世が彼の意識の中に広がりました。それはまさに不意に起こったことです。彼はしばらくの間、下を向いて何かを感じていました。その後は目を閉じたまま、時折口元で笑ったり、眉を顰めています。10分か15分、それぐらいの時間が経過した後で彼は顔を上げて目を開きました。
「シュンさんの前世が入ってきました」
ダイスケはニコニコしながら口を開きました。
「へえ、それどうなの?」
私は少しいぶかしげに彼に尋ねました。
「おおよそ、思った通りですよ」
ダイスケはそう答えると今、見たばかりの私の前世を話し始めました。
ダイスケによると、私は前世では僧侶だったそうです。それも立派な法衣をまとった僧侶ではなく、ボロボロの法衣をまとってすり減らしたわらじを履いて、来る日も来る日も日本中のあぜ道を歩き続けている僧侶なのだそうです。
確かに私の意識の中にも、白い息を吐きながら、雪が積もった山間の村々を巡り歩くシーンは何度も出てきます。あとは紅葉に染まった森の中の小道を登っていくシーンと、その時の”ハア、ハア”という息遣いが意識にこびりついています。
私は今も出張鑑定や行方不明者の捜索で日本中を巡っていますが、その中で何度か「ここに絶対に来たことがある」と感じた場所がいくつもあります。それらは決まって地方の田舎町で近くに山々が見えるようなところです。
「できれば、金きら金の恰好をして大きな本堂でふんぞり返っている大僧正が良かったんだけどな」
私が彼の話を聞いて苦笑いを浮かべると、ダイスケはすかさず、
「そんなこと思ってないですよね。だからシュンさんは今、この仕事を続けているんですよね」
私の心を見透かしたようにそういって笑いました。
私が今、この仕事を続けているのは、ダイスケによれば、前世で自分の仕事をやり遂げていないため、今世でその目的を達成することがテーマになっているからだと言います。言ってみれば、私も前世の因縁因果を引きずっているのだそうです。
果たして今世で、私が人生や命や生きるとに何かの答えを見つけ出すことができるのかと言えば、今はまさに五里霧中です。私はダイスケの話を聞いて、きっとこのままでは間違いなく来世までこの因縁を引きずり、来世でも霊能者になるのだろうと思えてなりません。