私に相談をされた人の中には、前回と同じように前世の因果を今世で解決できなかった方がいます。その方は40代半ばの男性で会社の人間関係で悩んでいました。元々、人付き合いが上手い方ではありませんでしたが、特に上司と馬が合わず、今風に言えば毎日”パワハラ”を受けていました。

 

この上司は社内の別の部署から2年前に異動してきて、会った時から何か言えば突っかかってきて、部下の前でも延々と説教をされてきました。会議でもこの方が提案したことはすべて否定され、「考えが浅い」とか「視野が狭い」とか怒鳴られます。黙っていれば「自分の考えはないのか」と怒られ、発言すれば「今まで何を勉強してきたのか」と責められます。社内でのこの上司の評判は決して悪くはありませんでしたが、この方に対してだけ仇のように辛く当たり続けました。

 

こんな状態が2年も続いたため、最近では会社へ行こうとすると頭痛や腹痛が襲ってきたり、手や顔が痙攣することもあります。転職も考えたようですが、20年以上も働いた会社ですからそう簡単にはやめられません。家のローンも残っていますし、これから大学受験を目指す子供もいます。40歳を過ぎてからの再就職が困難なことも目に見えています。会社を辞めたいのは山々ですが、辞めたら元には戻れません。一体どうしたらよいのかという相談でした。

 

私はこの上司の言動には、性格や人間性の問題にとどまらない強い憎しみを感じました。現世ではそれまで二人に接点はありません。ですからその憎しみがどこから来ているのか特定するために、二人の前世を観てみました。

 

すると、とんでもない過去が分かりました。二人は前世では、明治時代に都内に住んでいました。しかも、長屋に隣同士で住んで、お互いに妻子を持って暮らしていました。上司は土木作業員で、この方は大工をしていました。当時の長屋の壁は薄く、耳をすませば隣の話し声も聞こえるほどでした。そこに小学生ぐらいの子供たちが住んでいますから、隣の騒音にはお互いに腹を立てることが多く、しばしば隣に怒鳴り込んでいるような関係でした。

 

そんな状態が続いてお互いにいがみ合っている中で事件は起こりました。酒に酔って仕事から帰ってきたこの方が眠りにつこうとしたところ、隣から壁をバンバン叩くような騒音が聞こえてきました。一気に眠気を覚ましたこの方は、大工道具のノミを握って隣に怒鳴り込みました。身の危険を感じた上司は、現場で使うシャベルを振り回して応戦しました。シャベルで何度か体を叩かれたこの方は、完全に逆上してノミを握ったまま、上司の体に思いっきり体当たりしました。すぐに真っ赤な鮮血が上司の体から吹き出しました。それでも怒りは収まらず、ノミを何度も胸や腹に突き立てました。床はあっという間に血の海になり、その中で上司は命を落としたのです。

 

この光景が頭に浮かんで私は思わずためいきをつきました。そして

「これはもうだめだ」と思わずつぶやきました。

 

このような前世がある中で二人の関係を修復することは不可能です。この年になって二人が出会ったことも、強い因縁因果のなせる業です。これからの転職が困難な年齢であり、住宅ローンや教育費に最もお金がかかる時期です。もっと若い頃に出会っていたなら転職活動はもっと楽ですし、お金も今よりは必要ありません。

 

私はこの方に私が観たことを率直に話しました。そして今の会社にこのまま残ると心身のバランスを崩して取り返しのつかないことになると伝えました。そこまで上司はこの方を責め続けてきます。これは上司にモラルがあったとしても、自分ではコントロールできないことなのです。

 

私はこの方に、直ちに転職活動を始め、無職にならないように転職先が見つかってから退職するように勧めました。それまでの間、苦しい時には何を言われえても気にせずに有休を消化するようにも話しました。

 

この方はわたしの話に納得して約半年後にこの会社を退社して転職しました。この上司とはそれ以来、連絡を取ることもなく平和に過ごしているそうです。(3)へ続く