前世と今世の関係でいうと、今世で自分の人生へ影響を与えている人は、前世でも同じように自分に影響を与えていた人たちです。前世で夫婦だった二人が今世では兄弟になったり、親友だった二人が今世では恋人になったり、ライバルだった二人が子弟になったり、その関係性が変わってまた出会います。

 

前回は過去世の因縁因果を克服した話を書きました。前回のご夫婦のようにしつこい因縁因果を今世で克服するケースもありますが、克服できずにまた来世以降へ持ちこしてしまうこともあります。

 

私に相談した人の中には、お母さんに小さい時から暴力や暴言を浴びせられ、学用品も満足に買ってもらえなかったという女性がいました。家は中流の家庭で決してお金に困っていたわけではありません。それでも「学校で使うノートを買って欲しい」と言うと「忘れた」と言いなさいと言われたそうです。この女性はお小遣いというものを親からもらった記憶はないそうです。洋服もいつもお姉さんのおさがりを着せられて、髪の毛も母親に切られると目茶苦茶にされるので、自分で鏡を見て切っていました。そしてついには高校の授業料を納めてもらえず退学になりました。そして家を出て、水商売に入り生計を立てました。

 

母親が実の娘になぜここまでひどい仕打ちをするのか。おそらくは母親自身も本当はその理由が分からないはずです。大人は自分の行動に対して、その時々で理由付けをします。しかし、それはそのときたまたま見つけた建前であって実態とは関係ありません。

 

私がこの二人の前世を観ると、娘さんはお母さんにお金を貸し付けた高利貸で、ひどい取り立てをしてお母さんを自殺に追い込んでいました。お母さんは平和に暮らしていた主婦でしたが、夫が病気になって働けなくなってしまい安易に高利貸に手を出してしまいました。そこから借金は雪だるま式に膨らんでしまい、夫には離婚を突き付けられ、一人になった後もずっと付きまとわれて、働いたお金のほとんどは高利貸に取り上げられてしまいました。そんな生活が数年間続いた後、お母さんはビルの屋上から飛び降りて自殺をしたのです。

 

この執拗な取り立て屋が自分の娘として生まれてきたのですから、かわいく思えるわけがありません。

 

お母さんに「なぜそんなにひどいことをしたのか」と尋ねれば、きっと「娘が悪いことをしたから」とか「しつけのため」と答えるでしょう。しかし、その実態は前世で何年間も苦しめられた憎しみが今世へ続く因縁因果として残っていたことでした。

 

私はこの女性に「申し訳ありませんが、お母さんとは生涯仲良くすることはできません」と明確に答えました。そして「下手をすれば、あなたはお母さんに殺されていたかもしれない。今後もお母さんと会うことは大きな危険が伴います」と話しました。女性は私の話に納得して、家を出て以来、何十年が経過した今でも母親とは音信不通にしているそうです。(2)へ続く