私が不完全ながらも三密加持を始めたところ、不浄霊の動きが一瞬止まりました。私はそのすきをついて印を結んだまま車へ駆け込みました。車の中は、霊符やパワーストーンなどで強力に結界を張っています。それは祈祷や呪詛返しなどでマントラを唱えるときに私自身を守る安全地帯として活用するほど強いものです。

 

この女性たちの不浄霊は、私を追いかけてくると、車のフロントガラスや窓ガラスに顔をくっつけたり爪を立てたりしてきました。そして車をゆすって私を脅かしてきます。それでも中に入ることはできません。

 

私はすぐに車のエンジンをかけました。幸い一発でエンジンはかかりました。私はUターンのできない細道を大急ぎでバックして国道に戻りました。そして一目散に山を下りました。

 

山を下りると先ほどまでどうしても声に出せなかったマントラがいつものように自然に口を突いて出てきました。私はガソリンスタンドに入りました。外に出て車を見ると車のガラスやボディーには川底の泥水のような手形が無数についていました。私はすぐに洗車機に車を通しました。泥の手形で汚れた車の表面はきれいになりましたが、リアのガラスの中央にまだ手形が一つついていました。不振に思って何度もタオルでふきましたが、この手形はまったく落ちません。それは車の中から付けられたものだったのです。

~あの強力な結界の中に一瞬でも入り込んだ不浄霊がいたのです~

 

花魁淵とは、昔、隠し金山などで働く男の相手をするために集められた遊女たちが、隠し金山の秘密を守るために、皆殺しになったと言われているものです。似たような危険な場所は全国に点在しています。私が入ってしまった山梨県の花魁淵では川の上に舞台を作り、そこに遊女たちを集めて踊りを踊らせている間に、舞台ごと破壊して遊女たちを川へ転落させて殺したそうです。

 

若くして無慈悲に殺された遊女たちの怒りや悲しみは現在まで癒されることなく残り続け、それは結界をすり抜けるほど強いものだったのです。