❖日々是好日❖ -2ページ目
父の痴呆は、
退院から日が経つにつれ
入院前の正常な状態に戻り
母をこき使う事は変わらないが
急に怒り出したりする事もなくなった
母はというと、
毎月の血液検査の結果での
腫瘍マーカーの値はどんどん悪くなり
年末には
CEAは≦5.0のところ、550を超え
CA19-9は≦37のところ、1000を超えた
ただ、他はこれといって何ともなく
食欲もあるしいつもの様に元気で
地域の行事では、
文化祭でのうどん作りや
野菜作りや販売に走り回っていた
特にクリスマスは、
毎年ケーキを10ホール以上焼いていて
それを指導もしていたので
毎日かなり忙しそうだった
年末に誘われていたグループでの旅行は
母本人に何か不安があったのか、
迷った挙句断りを入れていた様だったが、
県内だしせっかくの機会だし
何かあったら私達がサポートする事にして
参加を勧めてみた
本当は内心こっちがドキドキだったけど
何事もなく無事参加する事が出来た
あんまり思いたくないけど
もしかしたら最後の機会になるかもしれないから
ただ「数値はあくまで数字だから」
と主治医が言う様に、数字は悪くても
このままずっと穏やかに過ごせるんじゃないか
という思いもありながら
毎月受診後に父と母の3人で行く回転寿司を
不謹慎な気もするが、楽しみにしていた
ここ数日、頭が痛いし
下痢が止まらないと言っていたが、
どうも熱が出てきたらしく
検査をしたらコロナ陽性
同室の咳をしていた人がコロナだったらしく
院内感染が広がってしまった様だった
コロナ陽性で隔離されてから父のラインは
「医師も看護師もみんなコロナだ」
「ここにいたら殺される」
「コロナに感染させられた」
「ここは次死ぬやつの部屋や」
「死ぬまで退院できやん」
「なんとか帰りたいから迎えにこい」
「トイレのふりして抜け出すから会いたい」
「(病気の母に)バスで会いに来て欲しい」
「霊がいる…カーテンが動いている」
「霊がたくさんウロウロしている」
「霊に連れて行かれない様にしなければ」
そして何度も
「ボールペンとノートがない」
1日40回ほど昼夜問わずのラインと
落ち込んだり怒ったりの電話の嵐
ボールペンはこの後も何度届けた事か
入院直後に何度も届かなかったのは
看護師のせいではなく、
もしかして父がおかしかったのではないかと
疑うほどだった
この時、病院からは
「コロナに感染されました」のひと言だけで
他になんの連絡も説明もなかったので
父の病院での本当の様子は分からないけど
しばらくは退院はないだろうと思っていた
コロナ感染確定から4日、解熱翌日
予定通りの抜糸があり、
その後突然の退院許可が出たらしく
「明日の朝家に帰る!」と父から連絡が来たが
まだ解熱したばかり
家には抗がん剤治療をしてい母がいる
「感染症は命取りだから気を付けて」と
主治医から言われている
父にはもう少し病院にいる様に言ったが
「母にはしばらく近づかない」
「かならずマスクをつける」と言って聞かず
仕方なく翌日弟が迎えに行き半月ぶりに帰宅した
しかし、帰ってきたら
マスクはしない、母をこき使うで
そんな父に母はイライラ
ストレスは体に悪いからと言い聞かせても
父は全く聞く耳もたず
聞いているのか分かっているのかも分からない
まともに話しが通じなくなってしまった
父が退院時に持って帰ってきた荷物は
弟が片付けてくれたんだけど
何故か半分に折られたボールペンが何本も…
で、頭元に置くために
買って渡してあった時計がどこにもなく
父は、病院の時計だと思っていて置いてきたと
一応貴重だから、
病院から連絡があるだろうと思っていたけど
やはりなんの連絡もなく
こっちから電話もしたくなかったので
そのまま病室に寄付?しておいた
腰は良くなったものの、家族から隔離され
意思疎通が出来ない高齢者達の病室に入れられ
人が周りで亡くなり
初めてそこでコロナに感染し…
かなりのトラウマになってしまった様で
もう死んでも入院はしないとのことだった
手術は無事終わり、
手術室から病室に戻るタイミングで
通路で数分だけだが面会ができた
麻酔が完全に覚めてない状態だったので
顔が見れた程度だったが
顔色もよく、少し安心した
麻酔も覚めたこの日の晩からまた、
「同室の人の奇声がうるさいくて寝れない」
「咳ばかりしている人がいて寝れない」
と、ラインがきた
確かに、待合室にいても奇声は聞こえていた
あの声の大きさで同部屋だったら、
いくら耳の遠い父でもうるさいだろう
というか、何故精神的におかしい人が
整形外科のフロアにいるんだろう?
もしかしたら整形外科のフロアではなく
高齢者専用のフロアなんだろうか?
奇声はあまりに酷い様だったので
ナースステーションに相談してみた
「病室がどこもいっぱいで移動ができない」
「空き次第移動するのでお待ち下さい」
との事だったので、それを父に伝えた
数日後、奇声をあげていた高齢者は
別の部屋に移動になったのか退院したのか
病室からいなくなったみたいだった
これで夜中、父からくるラインも
少しは静かになるのかと思っていたら
数日後…
「隣のベッドの人が死にそう」と
まぁ、病院だから色んな人がいるわな、と
夜中そんなラインのやりとりをしていたら
「隣のベッドの人、
うめき声あげて苦しそうにしとったら
今、看護師達が来てバタバタしている」
「何やら看護師がずっとゴソゴソしている」
「ベッドの上に誰もいない…死んだか?」…と
病院だからなくはないんだろうけど
体調急変したら、個室とかに連れて行くのでは?
とか思っていたら、翌朝ラインで
「朝、荷物もなくなっていたから
来た看護師に聞いたら、夜死んだって」
・・・・・
そうなん??
大部屋で??
そういうのあるの知らなかったから
ちょっとビックリ
そしてこの後、
何故か父は部屋を移動する事になった

