客の一言に困惑した | 洋服直し屋の日常

洋服直し屋の日常

服の直しや仕立ての仕事をしています。
日常で出会ったおもしろいこと、服の製図や
自分でできる修理方法など書いています。

                        客の一言に 困惑した


1か月に一度来店されるお客さん(40代後半の男性)

本人さんの体臭・油や泥で汚れホーダイのズボンも臭う。
話し方も「て・に・を・は」が変。軽い知的障害があるようだ。

性格はいたって素直だが、ご本人の臭いズボンを扱うのに抵抗があった。

まっ白なアイロンマット、ミシン台が汚れるからだ。

 

仕事場にも臭いが充満する。

この後に扱うお客さんの衣類に、汚れや臭いが移ると困る。

 

 

「洗濯をしてから持ってきてください」と頼んでも「はい」だけ。

なので私は修理のまえに、まずこのかたのズボンの洗濯しなければならない。

一度では落ちない。2度洗いが必要だ。

 

 

そのことを伝えると、それ以来「洗濯もおねがいします」と言われる。

洗濯や入浴がメンドーなタイプのようだ。

 

 

                  

 

 

修理代を払うより新品を買ったほうが安いのに。
作業服専門店で買えば、新品1,200円ぐらいで買える。
何度もそう言ったのだが

「修理したズボンが好きなんだ」と言われる。その理由が私にはわからない。


先日のことである。

店内にあるエアコンのフィルターを、掃除したいと思った。
だが、立つことが困難の私には、椅子に乗りそれを外すことができない。
そこへこのお客さんが来店された。

天の助けだと思った。
「フィルターを洗いたいのですが私は立てません。外していただけないでしょうか?」

「いいですよ。ズボンの受け取り来た時、フィルター元にもどせばいいんですね」

翌日

ズボンを受け取りに来られ、フイルターも元にもどしてくださった。

「修理代は1,800円ですが、助けてくださったお礼に1,000円を差し引いて
800円でいいですよ」と言った。
楽しみに保存していた「虎屋の羊羹食べきりサイズ」も3本あげた。
すると

「もし、電球のとりかえ、家具の動かす、助けてほしい
あったら電話ください。助けに来ます!お菓子は要りません。
そのかわり僕の服の修理代、半額より安いにしてください」と言われた。


「はぁ。わかりました。その時はまたよろしくお願いします」と答えた。


私は誰かの手を借りたとき、その手助け代を必ず払う。
恩義をうけたお礼として、人間なら当然の行為だ。

 

ほとんどの人は「いいんですよ、お互いさまです」これがフツーだ。

だがこれほどはっきりと見返りを要求されたのは初めてだった。
ビジネスライクでいいじゃないかと思う反面、感謝より
虚しさだけが残った。

「助けが必要ならいつでも来ます!」
言われたときは
このお客さんが白馬の王子さまに見えたんだけど。  

                                                                             

Win-Winの関係も悪くない。だけど・・・・・・

ああ、せっかくいただいた高級羊羹・・・・・・


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