第十話:岩龍女神の神殿(第三段落目) | マーロールのブログ

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リバドブルムはリタに留目を刺すと言わんばかりに、彼女の背中に大剣を向ける。そこへ、誰かが彼女の方に走って行くのが、ヨゼフ達の目に映った。


「リタ!」


そう叫んだのは、岩龍族のリアスだった。リアスはリバドブルムに向かって、体当たりをかました。彼女の体当たりによって、リバドブルムは、宙に投げられるようにして、地面に叩きつけられる。


「ありがとう、リアス。それにしても、さっきの体当たりは凄いね」


「どういたしまして。あなた達のおかげでわかったの。仲間の大切さがね」


リアスが先程までのお転婆な態度とは異なり、真面目な顔つきになっているのが、リタにははっきりと見える。


(リアスは本当に、仲間の大切さがわかったのか? 僕にとっては、どうも半信半疑なんだけど)


ヨゼフはリアスの言葉に疑問を感じながら、戦いに専念することに決めた。彼は槍を片手で持ち、それをリバドブルムに向かって投げる。無論、彼の体に向けてではなく、《早くこの神殿から立ち去れ》という命令的な意味からの攻撃であった。それを察してか、岩系魔道師はのろのろと起き上がる。


「今回は岩龍女神シトラルに免じて、撤退する。が、キア様に歯向かうのはやめておくことだな」


負け惜しみを言い、岩系魔道師は神殿を去る。安心してヨゼフは、先程投げた槍を取りに行く。他の三人も疲れを見せるように、地面に座り込む。


「リタ、その左腕を見せて。あたしが治してあげる」


リアスは、知らず知らずのうちに血塗れになっているリタの左腕を見て、言った。


(いつの間にこんな血塗れに……。どうりで、さっきから痛むはずだ)


リタはリアスの好意に甘え、治療してもらうことにした。包帯で包まれる左腕からは、リアス自身の優しさが込められている。少なくとも、三人にはそう感じられた。


しばらくして落ち着いた頃、四人は引き続き祭壇を探す。ふと、ナンシーが数メートル先にある水晶玉のような物を見つけた。


「三人とも見てよ、あれ」


ナンシーは、人差し指で光が出ている方向を指して言った。


四人がその先に行くと、茶色で透明感のある光を放っている場所に出た。おそらくここが、岩龍女神シトラルが祀られている祭壇だと、リタは思った。


四人は、神秘的な光の源である水晶玉を眺めた。すると、水晶玉からテレパシーのように誰かの声が、四人に伝わってきた。


『はじめまして、私はシトラル。現在の岩龍族の民からは、《岩龍女神》としか呼ばれなくなりました。が、私はここでずっと、《新たな杖使い》が来るのを待っていたのです』


シトラルと名乗る女神は、不思議な発言をした。これはおそらく、ヒアの時と同じように《新たな龍戦士の覚醒を女神が待ち望んでいる》という言い方なのだろう。三人は、先程の岩龍女神の口調から、そのように予想していた。


リアスも岩龍女神も、しばらく黙り込む。が、誰よりも先にこの沈黙を破ったのは、シトラル女神だった。彼女は、リアスに二つの質問をする。


『リアス、あなたはこの魔界を、《闇龍アルエス》から、守りたいと思いますか?』


「はい、もちろんです」


『では、もう一つ質問します。あなたはこれから私が託す杖を悪用したり、それで悪戯しようと思ったりしませんね?』


「しません。絶対に、誓います」


リアスは半ば緊張していたが、上手に岩龍女神の質問に答えることができた。


『リアス、やはり私の目に狂いはありません。あなたは、私の力を受け継ぐにふさわしい魔族です』


そう言うと女神は、リアスに杖を託す。


(これは伝説の《シトラル・ロッド》。女神がかつて龍戦士だった時、デュラック王子と共に闇龍を封じることができたという、あの……)


リアスは魔界を守るための覚悟を決めたものの、自分にこの杖を扱うことができるのだろうか、と戸惑っていた。だが、新たな岩龍戦士になった以上は、彼女は街や魔界全体を守っていかなくてはならない。


(あたしには、リタ達を始めとして、これまで目覚めた六人の龍戦士達がついてる。だからこそ、この街に残り、残り四人の龍戦士が目覚めるまでの間は、街を守りたい)


リアスは岩龍女神の言葉を真摯に受け止めながら、そのようなことを考えていた。


「決意は固まったかい、リアス?」


ヨゼフは、半ばリアスをからかうように言った。三人とも、真剣な眼差しで彼女を見ている。それは、ようやく役目を実感したか、という意味ではなく、単にあたしが何を思っているかを悟る意味なのだ。それを感じたリアスは、ようやく決意を固める。


「あたし、岩龍族のリアスは、これからもこの街を守っていきます」


この答えを待ち望んでいたのか、シトラル女神は落ち着いているようだった。


『ありがとう、リアス。その心意気を忘れないでください。そして、いつまでも笑顔を絶やさずに過ごすのですよ』


最後に女神は言って、四人に語りかけるのをやめた。


「女神様とお話しできるなんて普通はできないから、緊張しちゃった。それと、凄く疲れた」


リアスは、痛む頭を抑えながら言った。愉快げに笑いながら、四人はギルネスのルッカス族長の家に戻る。