岩龍族の民にとっては慣れていても、他の種族の人々には気持ちの悪い足場にしか感じられないギルネスの地面。そのような場所が続く岩龍女神シトラルの神殿の中で、リタ達は様々な仕掛けを解きながら、進む。お転婆で世間知らずのリアスにとっては、この神殿での冒険が大きな試練に感じられるかもしれない。
リタは父親に似た眼差しで、リアスをそのように見ている。
凸凹とした道が続くなか、四人は幅広く広がった箇所と、遠回りに使えそうな道とに分かれている場所に出た。この分かれ道をどのように進もうか、四人は相談した。リタは、他の三人に二人ずつに分かれて進もうと意見する。
「それはどういうこと?」
ヨゼフが訪ねた。
「つまり、一人は私の背中に乗って穴を越え、残った二人は走って遠回りする。この方法で、四人一緒に合流しようということさ」
リタの案には、三人とも納得した。ドーナツのように丸く空いた穴を、リタとヨゼフは乗り越えた。一方でナンシーとリアスは、がむしゃらに走って遠回りをした。こうして三分後、四人は合流した。
この先は大きな岩が二つあり、まるでリタ達の行く手を阻んでいる者が、この神殿に潜んでいるように見える。
「どうしようか……。二つも馬鹿でかい岩があったら、引き返すしか……」
リタは予想外の出来事にばかり出くわしたので、思わず弱音を吐く。そこへヨゼフが、ここは僕に任せろと言わんばかりに腕を回し、いかにも自信に満ちている。彼は強い力で岩を持ち上げると、先程リタと通った広く深い穴の方に向かって投げる。すると、岩はズシン、という音を立てて下に落ちていった。
「凄い……」
リアスは先程のヨゼフの力仕事を見て、驚かされるばかりだった。ヨゼフの力によって、封鎖された道が開き、四人は更に神殿の奥を目指して走る。その先には、頑丈な鎖で封鎖された茶色の扉があった。
「こんな鎖、私の火の魔力をもってすれば、朝飯前よ」
ナンシーは余裕綽々とした態度で、爪の先に魔力を集中させ、それを鎖に近づける。すると鎖は、使い物にならないくらいに焦げてしまった。ナンシーは、満面の笑みを浮かべている。
四人は扉を開ける。その先には、またしても魔道師の一人が、リタ達を待ち構えていた。三人は武器を構え、魔道師を威嚇する。
「お前はリバドブルム。なぜ、ここにいるんだ? ここには、岩龍族やほんのひと握りの魔族しか、入れないはず」
リタはしかめっ面をして、尚もリバドブルムという魔道師を威嚇する。
「随分と大きな口を叩くようになったな。小癪な龍魔族など、キア様が処刑するまでもない。この俺が、お前達を《冥界フェルシス》に突き落とす」
リバドブルムは吐き捨てるように言い、リタ達に襲いかかる。その様子を見て、リアスは岩の陰に隠れ、リタの勝利を見守っている。
(リアス、なぜ君は隠れる? 隠れてても、何の得もない。魔法がある程度使えるなら、君も戦うんだ)
リタの体は戦闘に励んでいるものの、目線や思考は全てリアスの方に向けられている。
「どうした、さっきの威勢の良さは? あの岩龍族が一緒では、戦いにくいか?」
リバドブルムにずけずけと言われても、リタは気にせず右腕にはめた爪で引っ掻こうとする。だが、その一撃はかつて彼女達が火系魔道師フィアロスと戦った時同様、いとも簡単に弾かれた。
(くっ! フィアロスといい、こいつといい、なんて力だ。これが、上級魔道師の力か)
そう思いながらリタは、必死に岩系魔道師の攻撃を受け止め、防御している。その一瞬の隙をつくように、リバドブルムはリタに襲いかかる。彼女はジャンプしてかわそうとしたが、リバドブルムの方から先に彼女の体を踏みつける。それはまるで、リタがリバドブルムの動きに翻弄され、彼のペースに引き込まれているかのように見える。
「リタ!」
ヨゼフは、思わず姫の名を叫ぶ。彼はリタを助けようと、リバドブルムの方に走る。が、それをリタが止めた。
「来るな!」
「な、なんでだよ?」
「君を、巻き添えにしたくない」
リタは仲間のことを想うあまり、強がってしまった。
「ほう、やけに抵抗するな。だが、その抵抗も、ここまでのようだな」
岩系魔道師リバドブルムは、大剣の先をリタの後頭部付近に突きつける。