【精神病】の発明


クレペリンの光と闇


筆者は精神科医の渡辺哲夫



この本は簡単に言ってしまえば、

エミール・クレペリンの伝記本です。



精神科に通院してるような人でもクレペリンのことを

知らない人は多いと思います。

もちろん、私も知りませんでした😅



エミール・クレペリン(1856-1926)は

ドイツの精神科医。


目に見えない精神の疾患を初めて分類・体系化し

【精神病】を発明した人物とされてます。



【精神病】の発明


って、

なんだか違和感のある言葉だと感じるのは

私だけでしょうか?



ちなみに、

クレペリンが発見?した精神病は当時、

「早発性痴呆」と表現され、

現代でいう統合失調症と双極性障害を指します。



これらの症状はずっーと前、

それこそ紀元前から記録に残ってるらしいのですが、

それまでは魔女とか悪魔付きとか、

医学的でない表現でしたが、

クレペリンが【精神病】、

つまり【病気】と分類して発明したということになってます。



エミール・クレペリンの名前は、

フロイトに比べたらあまり知られてませんが、

精神医学においては大きな影響を残し

(精神医学の父)とも言える。



ところで、

この本の(はじめに)で、筆者の精神科医である

渡辺哲夫医師はこう書いてます。


1980年ごろ、

アメリカ精神医学会からDSM3が現れ流布し始め、

次いで、

世界保健機構から国際疾病分類学ICD10が出た。



精神医学も、

見かけだけにせよ、科学的な意匠、

方策定立的秩序のようなものが欲しくなったのだろう。



この2つの分類書は操作的診断体系として相互によく似ていて、

猛烈なスピードで世界の精神医学を席巻していった。


しかも、

ここ2つのマニュアルは明らかに20世紀初頭の

エミール・クレペリンの体系に依拠していたのである。




個人的にはこの(はじめに)書かれた、


見かけだけにもせよ

精神医学会も科学的な意匠、

方策定立的秩序なようなものが欲しくなったのだろう。



この文章が現代の精神医学の礎になった原因だと

思いました。





精神医学の歴史的な本はけっこう読みましたが、

単純に簡単に言えば、


精神科医達の切なる狙いは

「精神医学を科学にすること」

「西洋医学の一つにすること、仲間入りすること」


これにつきます!



そのためには、

マニュアルが必要だったんですよね。

 


レントゲンなどの映像にも映らないし、

血液検査でも判明しないビョーキとされてる

ビョーキを正式に病気とするためには。



この本、

エミール・クレペリンの伝記としては、

かなり詳しく秀逸だとは思います。

でも、

クレペリンに興味がないので飛ばし読みしました笑。



クレペリンの人物像として、

よく表現されるのが

「冷酷で人付き合いの悪い研究の鬼」  

「ユーモアのかけらもない陰鬱者」


さらには反ユダヤ主義者、民族的主義愛国者としても

知られてました。


第二次世界大戦前に亡くなってますが、

もし生きてたら、

ナチスにかなり深く関わることになったかも

しれませんねぇ。恐ろしや。



この本では、

クレペリンのそうした闇的なことだけでなく、

いやいや、こんな人間らしいエピソードもありますよ、

好意的な面も紹介してます。



 エミール・クレペリン



ちなみに、

ドイツ精神医学は日本の精神医学に大きな影響を与えてます。



戦後こそ、

アメリカの奴隷国になったのでアメリカ精神医学を

奉り教科書にしてますが、

それまではドイツが教科書だったわけです。


日本精神医学の父、呉秀三もクレペリンに学んでます。



笑えるエピソードとしては、

斉藤茂吉とクレペリンのエピソード。


クレペリンより26歳年下の斉藤茂吉にとって

クレペリンは憧れの大スター。

歓びと尊敬の念に包まれて握手してもらおうと

手を差し伸べたのですが、

2度までも露骨に拒否されたそう。


さらに茂吉の目の前で、

クレペリンはジャワ人医師とはにこやかに握手を交わし

挨拶を交わしてたそう。


斉藤茂吉も激しい性格でしたので、

がっかりしたり悲しんだりはせず、

怒り心頭状態だったそうで、

帰国後にはクレペリンのことを「毛唐め!」と

唾棄してたそうです笑。





失われた

「ほんとうの精神医学」とは何か?



このお言葉はとてもとても奥深いものだと思います。


現代の精神医学はもはや医学でない?!


アメリカのDSMマニュアルはどんどん病気を

作り上げ、

精神病患者を大量生産することに成功しました。



患者を増やさないと市場拡大できませんからね。



アメリカの属国である日本は、

それを正しいものとして疑いもせず受け入れて

追従してきて現在に至る。


患者自身である我々も、

そこになんの疑いも抱かず素直に向精神薬を飲み、 

治療を受けてるから良くなってる効果が出てると

思い込んでいる。


ちなみに、

本当に効果的な治療なら完治して通院を卒業

してるはず。


「寛解」という治せない精神医学が作り上げた

誤魔化しの言葉を口にしてるようなら、

それこそ騙されたままでしょうけど。