2019年7月に発生した「京都アニメーション放火殺人事件」。
京都地裁は青葉被告に死刑判決を言い渡しました。
青葉被告の責任能力の有無をめぐり精神鑑定も
話題なりましたが、
そのことについて、
ベテラン精神科医である岩波明氏のコメントが興味深かったのでご紹介します。
岩波明医師によると、
「被告の言動を見る限り、
彼は100%統合失調症であり、
それ以外は考えられません。
遺族にとっては、つらく受け入れがたいことでしょう。
ですが、被告には責任能力はなく、罪に問えないと考えます」
精神科医の岩波明氏はこう断じた。
「被害者にはたまったものではないですし、
大勢の人が亡くなってしまったことは不幸なことです。
でも、
あくまでも医学的な観点での印象は
『統合失調症の人が起こした珍しくない事件』です」
実際、
青葉真司被告は37歳の時、統合失調症と正式に診断されてます。
岩波医師は、
多くの臨床にあたる精神科医は統合失調症と考えるだろうと語る。
しかし、
地裁判決がどうなるかという視点で言えば、
「責任能力を認める=重い量刑になる」可能性が高い、と岩波氏は見ている。
「それは裁判所が世間に忖度するから」
検察側依頼による精神鑑定は和田央医師。
「妄想性パーソナリティ障害」であると診断。
弁護側依頼の鑑定は岡田孝之医師。
被告は統合失調症ではなく、
「重度の妄想性障害」によるものとした。
両者ともに責任能力について明確に言及しなかった。
精神鑑定で、
精神科医が「責任能力がある、ない」と判断を下すわけはないんですね。
あくまで裁判で裁判官が決断を下す。
そして、
「裁判所は世間に忖度する」。
刑法39条で「心神喪失者の行為は、罰しない」
「心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する」と規定している。
起訴前に「責任能力がない」と判断されれば、
公判を始めることができない。
そのため、
検察による起訴前の精神鑑定では、
明らかに統合失調症を疑われる症状があっても統合失調症にならず、妄想性障害や妄想性パーソナリティ障害といった診断になることが多いのだという。
そうなんですね。
薄々そうではないかと思ってましたが、
ハッキリと精神科医の岩波明氏の口から聞くと、
少し驚愕しました。
犯罪云々に関わらず、
精神鑑定はあくまで冷静的に医学的になされると
思ってたからです。
やはり、結果ありきの鑑定なんですね。
日本では極刑に死刑があります。
死刑に相当する重大事件の場合、
検察は当然極刑、死刑を求刑します。
だから、
検察が主体で精神鑑定をするときには、
医学的な観点で精神疾患と認められても、
社会的な制裁を求めて鑑定結果が歪められてしまいがちらしい。
重大な犯罪で極刑を求めるのは検察だけではない。遺族も処罰感情から極刑を求め、
国民世論もそれを支持する。
そんな中では、
精神鑑定自体もそうした社会の声に押されてしまう面は否定できないと
岩波氏は言う。
つまり、この死刑制度という存在が
『医学的な観点=精神鑑定』を歪めていると言えます。
と、
岩波明医師は問題を提起する。
日本での起訴前の精神鑑定は『心神喪失である』という可能性を消すためのプロセスになってしまっている。
そうでないと公判を行い、
極刑を求めることができないからです。
岩波明医師はこう締めくくります。
統合失調症という精神障害がもたらした犯罪をどう捉えるべきか。
また、
医学で見る精神鑑定をどう司法で扱うかは、
改めて考えていく必要があると思います。
「死刑制度が結果歪める」