今年2月、英王室のヘンリー王子が所属する近衛騎兵第2連隊「ブルーズ・アンド・ロイヤルズ(Blues and Royals)」のイラク派遣が決まり、




かねてから王子も前線への出征を希望していたので、ヘンリー王子にもイラク行きの可能性が出たと報じられました。


ヘンリー王子は、イートン校の後、陸具士官学校を卒業した青年士官で、連隊の中で11人の部下を持ちます。


イギリスでは中世から、王族は騎士(ナイト:knight)の称号を持ち、騎士として武技の練磨に勤しみ、戦時には王も自ら軍隊を率いて戦場に赴きました。時代を下った近世も、王子たちは軍隊に入るのが慣わしで、父チャールズ皇太子もかつて海軍士官であり、祖父エジンバラ公は、エリザベス女王との結婚前第二次大戦に従軍し、戦後は日本が降伏文書に調印する際、ミズーリ号に乗船していた士官の一人でした。

歴代国王やその王子たちの肖像にも軍服に身を包んだ姿が残っていますし、近年では、ヘンリー王子の叔父、チャールズ皇太子の弟アンドリュー王子(現在のヨーク公)が、1982年のフォークランド紛争に従軍しています。


それでも王位継承第3位のヘンリー王子を危険地帯に派遣することについては、慎重な動きもありましたが、いよいよその派遣が現実的なものとなり、部隊を指揮する参謀長は、ヘンリー王子を含む部隊のイラク派遣を決め、安全の為に過剰な報道を自粛するようコメントが発せられました。



ヘンリー王子の派遣されるバスラは現在危険を増しているようです。戦時にはどこも危険であることには変わりませんが、今回相手にしている敵が、尋常な戦い相手ではなく、テロリストという、理屈の通らない相手なので、正々堂々と戦うのではなく、卑劣な方法でヘンリー王子を狙う動きがあるかもしれないことを、英王室、英国陸軍は殊更に危惧して、決定までに時間を要したことと思います。


スキャンダルの多いヘンリー王子には、その素行に対する非難と同時に、多感な時期を過ごした境遇を思い、英国国民の同情の念もあるようです。

かつて、アンドリュー王子も、派手なロマンスで世間を賑わわせ、英王室の問題児とされていました。そのアンドリュー王子が「変わった!」と思ったのが、フォークランド紛争従軍後でした。

子供の頃病弱で、生き死に関わるような大手術を受けたこともあるヘンリー王子の行く末を、母ダイアナ妃は心配し続けていていました。か弱かったヘンリー王子が、人間的に大きく成長し、将来国王となる兄ウィリアムの一翼となるような、立派な王子になって戻ってくることを、英国国民は心から願っていることでしょう。

どうか無事な帰還を私も願います。


アンドリュー王子については矢印「英国 ヨーク公アンドリュー王子」 を(5月4日upの予定)