映画『アンジェリク』は





1960年代フランス製作の映画ですが、日本では10年ほど前に単館初上映され、一度シリーズ5作をBSで放送されただけなので、あまりご存知の方はいらっしゃらないかと思いますが、フランスでは知らない人のいない有名な歴史大河小説を映画化したもので、ブリジット・バルドーが女主人公アンジェリクのオファーを断ったことを後々まで後悔したというのも、有名な逸話です。



St. Valentine's Dayを前に、この映画公開当時、銀座プランタンの企画チョコレートで、「アンジェリクの時代を再現したルイ14世の生チョコ」という美味しいチョコレートがあったんですね。バレンタイン→チョコレート→アンジェリクという発想で、『アンジェリク』をビデオ鑑賞しました。




はだしの女侯爵


物語は、フランス中西部、ポワトウ地方モントロー、サンセの一人の少女の物語で始まります。




イスラムに遠征されたことのあるフランスでは、髪と目の色はブラウンというのがやはり一般的で、ブロンドに緑色の目を持って生まれた女性は、それだけで将来を約束された存在だったようです。





サンセのアルマン男爵令嬢アンジェリクは、金髪と緑色の目を持って生まれた美しい少女でした。




貧しいながらも愛情溢れる家庭ですくすくと育ったアンジェリクは、貧しい家を助けるために、裕福な伯爵家に嫁ぎます。

結納金で領地の税金を支払うための、政略結婚でした。

アンジェリクはそう思っていたのです。



南仏ラングドッグの名家ペイラック伯爵のジョフレは、子供の頃巻き込まれた宗教戦争の折負傷し、顔に大きな傷を負って片目を失い、片足も不自由な怪人のような醜い人物でした。サンセとは土地柄も文化も違い、新しい生活に一瞬期待を抱いたアンジェリクは、すぐに失望の淵に落とされます。

しかしジョフレは自分の境遇を憂い、人生を呪って生きるほど軟弱ではなかったので、武勇に優れ、頭脳明晰で、商才に長ける聡明な領主で、また芸術の才能もあり、領民の信頼厚く、多くの女性からの支持を得る素晴らしい男性でした。





ジョフレがアンジェリクを妻にと望んだのは、アンジェリクがまだ子供の頃、村の子供たちを率いて元気いっぱいに野山を駆け回る姿を目に留めて、是非にと心に決めていたのでした。


やがてジョフレと心通い、幸せをつかみ始めたのも束の間、ジョフレ・ド・ペイラックがルイ14世の嫉妬を受けて、アンジェリクの人生は暗転します。




お妃を迎えるためスペイン国境に出向く途中、ラングドッグに立ち寄った国王ルイ14世はアンジェリクの美貌に魅了され、また王族のような生活を送るペイラック伯爵に嫉妬し、魔法使いの汚名を着せてジョフレを火刑に処します。伯爵家の財産はすべて没収され、悲嘆の中で貧しい人々のための介護院で一人次男を出産したアンジェリクは、乞食に身を落とします。

アンジェリクと関わることで自身も災いを受けるのを避けようと、誰も彼女の力にはなってくれず、悲嘆に暮れるしかありませんでした。



第一話はここで終了します。

映画はここまでだったのですが、公開から数ヵ月後、ビデオで続編が発売され、一気にレンタルして見ました。





ヴェルサイユへの道


サンセでアンジェリクの幼馴染だったニコラは、パリで大盗賊の頭目となっていました。



ペイラック伯爵の2人の子供を抱えて、女性が一人で生きていける時代ではありません。アンジェリクは決心し、以前からアンジェリクに心を寄せていたニコラの庇護を受け入れることにします。子供たちは暖かい寝床と、お腹いっぱいの食べ物、そして安全な生活を手に入れたのです。




アンジェリクはレストランを始め、ジョフレの館で女主人として身に着けた才覚でレストランを演出し、メニューを選び、たちまち評判を呼んで繁盛しますが、王弟の気まぐれでレストランに襲撃を受けすべてを失います。

しかし泣き寝入りすることなく、やがて王妃が秘かに愛飲しているチョコレートの販売権を得て世の中にチョコレートを広め、財を成します。豊かな商人として宮廷にも出掛けるようになりますが、それでもアンジェリクは庶民であり、まだ足りないものがありました。



子供の頃の憧れの人、従兄のフィリップ・ド・プレシベリエール侯爵と結婚し、“公爵夫人”となったアンジェリクは再び社交界の人となります。





太陽王とアンジェリク



ルイ14世宮廷の華であり、王の寵愛を受ける臣下の一人となったアンジェリクは、ペイラック家の財産と領地を取り戻し、そこで、ジョフレ生存の可能性を感じ始めます。

王の使者として出向いたペルシア大使の誘惑を、ハンガリー王子のお陰で寸前のところで退けて難を逃れたアンジェリクは、交渉も成功させ、美貌だけではなく外交手腕も評価されます。



アンジェリクは益々王の寵愛を受け、王もアンジェリクを常に傍に置きたいと考えるようになります。



常に貴族たちに囲まれて生活する王から、特に誘いを受けることは大変な栄誉で、アンジェリクは宮廷の宴にも、庭園の散歩にも、王からじきじきの招待を受けます。



そんな折、秘かにアンジェリクの様子を尋ねにきたジョフレの姿を見付け、アンジェリクの疑念は確信となるのです。感動の再会を果たしたものの、ジョフレはすぐに身を隠してしまいます。



金髪の女奴隷


アンジェリクはジョフレの消息を訪ねて南仏に出向きますが、宮廷に連れ戻そうとする王の追っ手を受け、ガレー船に飛び乗って逃げますが、その船が海賊レスカトールに襲われてしまいます。



命からがら救助されたアンジェリクは、その船長に感謝するどころか、逆にその船長に女奴隷として売られてしまいます。


ハーレムに入れられたアンジェリクは、スルタンの第3夫人に仕立てられますが、寸前のところを海賊レスカトールに救出されます。




その海賊レスカトールこそ、火刑を逃れたジョフレだったのです。




ルイ14世により不当に財産ばかりか命まで奪われた(・・・かけた?)ジョフレは、国王への服従の意は捨て、逆にフランス王国に害を為すことも厭わなくなっていました。

それでもジョフレとの再会を喜び、幸せに浸るアンジェリクの幸せは、長続きはしないのです。




アンジェリクとスルタン


フランスの敵となっている海賊船レスカトールを攻撃するフランス側の船、エスクランヴィル。

ジョフレと引き離され、いわば救助されたアンジェリクを取り戻すためにジョフレがエスクランヴィルを攻撃して乗り込んだとき、既にアンジェリクの姿はありませんでした。



ジョフレの手さえ及ばないアルジェに侵入してアンジェリクを助け出すため、ジョフレはガレー船に潜入して、上陸を計ります。


アルジェリアに女奴隷として売られたアンジェリクは、ジョフレの助けを信じ、ハーレムに入れられてもスルタンを拒み続け、鞭打たれてもジョフレへの愛を貫きます。




好機をつかんで海岸まで逃げ出したアンジェリクは軍隊に囲まれ、絶望と思ったとき、彼らは一様にアンジェリクの前に跪きます。

目覚めると、アンジェリクはジョフレに見守られているのでした。






この映画の主人公を演じたミシェル・メルシェは、一躍人気者となり、アンジェリクのイメージからチョコレートビジネスを始め、成功を収めたそうです。


私は映画より先に小説を読んでいて、その壮大な物語に魅了されてたちまち大ファンとなりましたが、映画では、小説よりもかなりエピソードが省略されてしまっていますし、その盛りだくさんの内容をギュギュッと凝縮しているので、少し駆け足な印象を受けました。

小説を読んでいる人には、映画には不満を残すのですが、映画だけ観た方には、それでも充分堪能できるようで、一緒にビデオ鑑賞した人はたいてい満足していますよ。レンタルショップなどに全5巻、たいていありますので、お時間があればお試しになってみて下さい。

今度、小説の方もご紹介します。


ところで・・・

私のアメブロのID「marqulse」は、このアンジェリク・シリーズの第一部の原題、“Marqulse des anges(天使たちの女侯爵)”のmarqulseに由来しています。

英語ではmarquiseと表記するので、ときどき誤字ではないかと思われてしまうんですけどね(^^)