元旦のお祝いに、お屠蘇は頂きますか?

独特の香りとお味で、好き嫌いはあると思いますが、私は好きなんですよね。

製造元によってお味に違いがあり、我が家では「島津」の屠蘇散を使っていますが、これが美味しいんですお酒


日本の伝統的なお正月のお祝いに頂くお酒の一種で、元旦に<お屠蘇>を頂くことにはきちんとした意味があります。


お屠蘇は1100年ほど前の嵯峨天皇の時代、唐の博士蘇明が和唐使(唐から日本に遣わされた使者)として来日した際伝えたもので、天皇四方拝(元旦)の御式後、お酒にこのお屠蘇を浸して御用いになりましたのが始まりです。 

国民もこれに倣い、元旦にお屠蘇を用いると一年中の邪気を除き、家内健康にして幸福を得られるとして、家ごとに必ず屠蘇酒を用いて新年のお祝いの儀式としていました。


屠蘇とは本来、「『蘇』という鬼(=悪い流行病)を屠(ほふ)る(=殺す)ということだと言われています。「屠」には「死」「葬る」という意味があります。

また、「邪(=風寒暑湿等の外因によって起こる疾病の病原、例えば、寒邪、湿邪)を屠(ほふ)り、身体を蘇らせる」という意味からこの名がついたという説もあります。

屠蘇散に調合されている薬草は7~10数種類(製造元により多少の違いがある)。

主なものとして、紅花浜防風蒼朮陳皮桔梗丁子山椒茴香甘草桂皮などです。


紅花(べにばな):赤色の染料として色付けに使われますが、服用することで血行を良くしたり婦人科疾患によく用いられました。


防風:セリ科の植物ですが、中国で使われてきたものは日本には自生していません。日本で同じような効能を持ち合わせているものとして、海岸に自生するセリ科のハマボウフウ(浜防風)を使用してきました。風邪などの邪気をはらって気を巡らせる働きがあります。


蒼朮:はホソバオケラの根を使います。やはり、邪気を追い払い身体の余計な水分を取ると言われています。


陳皮:ミカンの皮ですが、吐き気を止め消化不良を改善するなど、健胃作用があります。


桔梗:痰を取り除き咳を止め、化膿をした時に排膿の目的で使用します。


丁字:西洋でもクローブとして使われ、身体を温めるのに使います。寒い日などホットウイスキーに入れますね。


山椒:ミカン科・サンショウの実の果皮の部分を薬用にします。やはり、お腹を温めて腸の蠕動運動を滑らかにします。昔は虫下しにも使われていました。ウナギを食べる時に振り掛けますね。脂っこいものの消化を助けるのでしょう。


甘草:マメ科の植物ですが、日本には自生しません。味を調えたり甘みをつけたり、解毒や鎮痛に用います。


桂枝:ニッケイの樹皮です。日本産の桂皮は時々お祭りなどで見ますが、気味が弱く八橋などのお菓子に使われます。中国南部、ベトナムに出来ます桂皮は上質で味も強く、桂通桂皮とか江南桂皮と呼ばれて薬に使われます。内臓の動きをよくして新陳代謝を亢進します。最も味のよい桂皮は、スリランカでセイロン桂皮の名前で栽培され収穫されています。


茴香:ハーブの世界ではフェンネルと呼ばれて味付けに使われています。香りがよくて胃腸の働きをよくしますので、芳香性健胃薬として使われています。


以上10種類の生薬を小さく切り刻んで調合したものを<屠蘇散>といいます。


お屠蘇は屠蘇散をみりんや日本酒に一晩浸して作る薬草酒で、みりんや日本酒には、ブドウ糖、必須アミノ酸やビタミン類が含まれており、また天然アルコールは血行を促進させます。お屠蘇は健康のための最高の妙薬として、昔からの風習だけでなく、現在でも風邪を予防する効果が期待でき、実際数年前、母は常用しているお薬の都合で風邪薬を服用できないので、お屠蘇で風邪を治したことがありました。
お正月で美味しいものをたくさん食べたり、お酒を飲んで胃腸に負担がかかっても、屠蘇散を服用すると改善効果があるようです。お酒に漬けて飲むのもいいですが、お酒を加えたお湯で煎じて服用するのもいいそうですよ。



■正しい飲み方
元旦の朝、若水(元旦の早朝に汲んだ水)で身を浄め、初日や神棚、仏壇などを拝んだ後、家族全員が揃って新年の挨拶をし、雑煮の前にお屠蘇を飲みます。

その時使用される器は正式には

三つ重ねの朱塗りの杯と飾りをつけた屠蘇器と、朱塗りまたは白銀や錫などのお銚子です。

飲む順序は一年の無病息災と延命長寿を願うところから、若者の活発な生気にあやかる意味で年少者より順次年長者へと盃をすすめるのが決まりです。

また、正月三が日の間の来客者に対しても、まず、初献にお屠蘇をすすめて新年のお祝いの挨拶を交わすのが礼儀です。


杯は男性は片手で、女性は両手で受けます。子どもやお酒が飲めなくてもお祝い事なので、軽く口をつけて、新年のお祝いをしましょう。


年々、お正月らしさが失われていく現在、私たち日本人が伝えてきたお屠蘇の習慣は、家族の健康と精神的な絆を保つ上で是非、伝えていきたい行事の一つです。