昨日、上野の国立西洋美術館で開催されている、「ベルギー王立美術館展」に家族で行ってきました。






我が家は家族全員絵画鑑賞が大好きで、特に伯父は美術・音楽の芸術を深く愛好しましたので、私はかなり幼い子供の頃から絵画鑑賞にはよく出掛け、絵画鑑賞は私の趣味の一つです。

好きな絵画の傾向は明確で、基本的に印象派以前、殊にルネッサンス期の絵画が大好きです。
一時『書誌学』に傾倒した時期があり、その頃には絵画よりも手書きの「写本」や初期の「活版印刷による書物」ばかりを見ていたのと、近代絵画に興味が薄く、友人に連れて行ってもらっても、

「わからない・・・(@ ̄Д ̄@;)」

「怖い画風((((((ノ゚⊿゚)ノ」

というような言葉を連呼してしまい、自分が心から訪れたいと思う企画展が少なかったので、久々に期待感を感じる絵画展でした。



小学生の頃までに殆ど好きな画家が確定していたので、画家の好みは大変直感的です。

ルーベンスの作品を初めて見たとき、なんと美しい作品かと感嘆したのを今も明確に覚えています。ルーベンスの描く雲は淡いピンクとブルーが入り混じり、この世のものとは思えない、天空の遥か上の、尊い世界の霞のような輝かしい雲で、それまで馴染んでいたラファエロゴヤなどにはない美しさで、その作品を見ただけで心が美しく浄化されるようで、たちまち好きな画家の一人に加えました。


ラファエロルーベンスゴヤベラスケスアングルの作品が来日すれば大抵行きます。

今回はフランドル会派のルーベンスの本拠地ベルギーの王立美術館の特別展示ですから、これは素晴らしいルーベンス作品があるに違いないと、開催前から大変楽しみにしていました。



・・・で・・・、やはりルーベンスの作品は4点出品されていましたが、私の好きな種類の作品はありませんでした。やはり大作はルーブルや、17世紀に勢力のあった国に収められているのでしょうね。これでかなりがっかりしちゃいました。




出展作品の中で印象深かった作品の絵はがきは必ず買うのが習慣なのですが、今回はその選択ができなかったので、こちらにアップする為に、注目作品の絵はがきを購入してきました。でも読み込むとボリュームが大きくアップできませんでした。







入場してすぐに展示されているのは、ブリューゲル「婚礼の宴」 でした。


それまでは王侯や裕福な商人を描くことが多かった芸術の世界で、ブリューゲルは一般の人の生活の様子を描いた最初の画家です。これは村の婚礼に、村人たちが喜び踊る様子を描いている、ブリューゲルの有名な作品の一つです。


額は簡素な木製で、木は風化して傷んでいました。多くの絵画で馴染みのある、彫刻の入った金色の色彩が施された額は与えられていません。この作品が発表された当時、この絵が得た評価の名残を感じるような思いです。


この作品が日本に来るのはかなり珍しく、入場して最初に目に入る作品がこの作品であることに驚きながら歩みを進めると、今会期一番の注目作品で、チケットの図柄にも採用されている、同じくブリューゲル「イカロスの堕落」 があります。



ギリシア神話から題材を得たこの作品の中で・・・・・・(・ω・)/



えっはてなマークはてなマークはてなマーク





はぁはてなマークはてなマークはてなマークはてなマークはてなマーク




あの~~~~、イカロスさんはどこ?汗



ちょうどこの絵の前にいたとき、周囲に車椅子の方がいて、作品は立っている人の目の位置に掲示されていますから、車椅子の方には作品がちゃんと見えるのかしら? 人が作品の前にいて車椅子では近付けず、作品を人の垣根越しにしか見えない・・・

と、そちらに気を取られていたので、イカロスの捜索はそこそこで通り過ぎていました。


でもね、ちゃーんと解説が出ているんです。


イカロスは蝋で出来た羽が溶けて海中に墜落し、船の近くに沈んでいる構図らしいんですね。

はいパーちゃんと船の近くに手をバタつかせている人がいる。あれがイカロスです汗はい...



けど・・・波



よくわかりません(^_^;

普通イカロスを描くならば、蝋の翼が溶けて海に真っ逆さまに落ちていく様子を描きませんか? こんなイカロスを探さなきゃならないイカロスの絵なんて、何の為の作品なのでしょう?


考えました。ふ~む・・・



ブリューゲル「イカロスの堕落」 をクリックして頂けるとこの作品を見ることができますので、宜しければこの先を読む前にちょっとポチッとして一緒に考えてみて下さい。



海上にのぞいているイカロスの腕がなくても、この作品は充分完成していると思うんですね。極普通の海辺の村人の風景です。

でも普通だれかが海に落ちちゃったら、慌てて救助に行きませんか?


今回幾つかの作品の中に登場するワンちゃんの存在を見て、私も家族の中にプッチーくんという可愛い存在があり、それまではサラリと見ていたその子たちの表情や仕草に、時代を経ても変わらないものを感じました。

つまり生きる時代は違っても、人の感情に変わりはないのですから、人が海に落ちて平然としているはずはありません。


なのにこの村人たちはイカロスをよそに日常の生活を続けています。これはブリューゲルが何を表現したかったのか???


イカロスの愚かさ、傲慢さは、人の関心を得ないもので、その為に堕落する人を人は救わないというブリューゲルのメッセージを感じました。



私が楽しみにしていたルーベンスの作品4作品の中では、「聖ベネディクトゥスの奇跡」 が164×262cmという大作でとても目を引き、中央の聖人の足元の雲にルーベンスお馴染みの光の魔術が描かれているだけではなく、その左側には、ドラクロワの模写した作品が展示されています。

しかし・・・ ドラクロワにはあのルーベンスの光の色彩、繊細な筆遣いはできず、「民衆を導く自由の女神」や「ドン・ジュアンの難破」などのように、暗い色彩の、力強いタッチの画風を特徴としているので、比べてしまうと大変劣って見えます。ドラクロワがルーベンスを模写することは、私たちが模写するのと違い、偉大な画家であるだけに、お気の毒でした。

ですが、同じ題材を同じ構図で同じように描いても、描く人によってあんなに仕上がりが違うのだということを、両雄の作品によって知ることの出来る、貴重な経験でした。



今回は他にも、大変構図の美しいヤン・ブリューゲルに帰属する「花飾りに縁取られたキリスト降誕」があり、母は絵はがきを購入して、帰宅すると早速祭壇に飾っていました。


ニコラース・ファン・フェレンダール「猿の宴会」 は、描かれている人物が総て猿になっていて、猿が洋服を着て宴会をしている作品でした。この時代に映画『猿の惑星』の世界を描いちゃう人がいるなんてキラキラその発想が気に入ってしまって、絵はがきにメッセージとスタンプを押して従妹にお土産として叔母に言付けました。

最初はおふざけ半分で購入した絵はがきでしたが、改めてマジマジと眺めると、人の世は所詮猿真似・・・という風刺に感じられ、皮肉の中に寂しさも感じます。




久々に楽しいときを堪能し、芸術の秋を満喫してきました。




「ベルギー王立美術館展」は、上野の国立西洋美術館にて9月12日(火)~12月10日(日)までの特別企画展として開催

入場料は大人・1400円/大学生・1100円/高校生・600円/中学生以下・無料


まだ芸術の秋をしていない方はお出掛けになってみてはいかがですか?


私は普通に窓口でチケットを購入したのですが、インターネットから割引チケットを入手できます⇒ http://event.yomiuri.co.jp/royal/quiz.htm

携帯からの入手もできますし、10月19日から東京都美術館で「エルミタージュ美術館展」があり、セットチケットもお得みたいですよ。