ローマ法王ベネディクト16世がこのような発言をなさっています。




 【ニューデリー15日時事】ローマ法王ベネディクト16世が、イスラム教が本質的に暴力を容認する宗教であるかのような発言をし、イスラム諸国から怒りの声が相次いでいる。2001年9月の米同時テロ以来、欧米の一部にはイスラムの教義そのものに暴力の原因を求める議論があり、イスラム教徒の神経を逆なでしてきた。パキスタン議会は15日、法王に発言の撤回を求める非難決議を全会一致で採択した。
 ローマ法王は12日、訪問先の母国ドイツの大学で行った講義で、東ローマ帝国皇帝によるイスラム批判に触れ、「(イスラム教開祖の)預言者ムハンマドが新たにもたらしたものを見せてほしい。それは邪悪と残酷だけだ」などと指摘。その上で、イスラムの教えるジハード(聖戦)の概念を批判した。  -Yahoo!ニュースより-





近年世界最大のテロ行為であった、2001年の同時多発テロから3日後の2001年9月14日。ワシントンDCの教会において、キリスト教・ユダヤ教・イスラム教の代表者が揃って、犠牲者を哀悼し、困難克服への強い意志を誓い合った姿に深い感動を覚えたことを今も忘れません。

間違いなくあの日、キリスト教徒・ユダヤ教徒と共に、イスラム教徒もテロリズムに対して毅然とした心を持ったはずです。イラク戦争が始まるとき、少なからずバチカンが関係回復と打開に向けて努力したはずです。



そもそもキリスト教はユダヤ教から分離独立した宗教であり、イスラム教もまた、同じアブラハムの神、ヤーウェを信じる宗教です。それだけに協調が難しい一面もあります。しかし過去においても現在も、争いの多くが、人種・宗教・思想を原因とするもので、宗教は人の心を高める為のものであるのに、それが争いの原因になるのは大変残念なことです。

世界最大宗教の一つ、ローマ=カトリックの最高位に位置するローマ法王ベネディクト16世のこの発言には、残念に思います。



ベネディクト16世は、先のローマ法王ヨハネ=パウロ2世の時代には、ラッティンガー枢機卿と呼ばれていました。

「ラッティンガー」は姓(ファミリーネーム)で、ローマ法王への就任と共に、法王名を定めます。ラッティンガー枢機卿は「ベネディクト」という名前を選ばれた16人目の法王でした。



礼名には不思議な威力があり、また、その人の志向を読み解くこともできるのです。

現在のローマ法王が選ばれた『ベネディクト』のお名から理解するには、中世の聖人ベネディクトゥスを知るのがよいのです。



ベネディクトゥス(480頃~543年)は、カトリックにおいて、初めての成文による修道会則(戒律)を定めた聖職者です。ベネディクトゥスが開いた修道院がカトリック教会最古の修道院で、ベネディクトゥスは修道生活における厳しい戒律を定めた聖職者でした。




ベネディクト16世は、バチカンの中でも保守派で有名でした。

聖ベネディクトの名を選んだことに不思議はなく、時代に適応して少しずつ変化していた教会の在り方ですが、今一度かつての姿に修正しようとする考えを根底に感じます。


ベネディクト16世は、中世ローマ=カトリック研究における権威でもあります。この時代への回帰を理想としているのかもしれません。

この時代はキリスト教がイスラム教と正面から対立していた時代でした。ベネディクト16世の心にもイスラム教への快くない感情があるのかもしれませんが、その発言にはやや強硬さと行き過ぎるものを感じ、気になるものがありました。