(東京国立近代美術館からの眺め 江戸城の石垣とビル群のコントラストが良いです。)

 

 東京国立近代美術館で開催中の「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」展(2024年5月21日–8月25日)に行ってきました。

 この展覧会、ずっと気になってはいたもののグズグズして行かず、しかし夏休み期間+会期末にかかってくると混雑が予想されるので、とうとう行ってきたというものです。

 この展覧会、三つの美術館から共通点のある作品でTRIOを組み、展示するというものです。その三つの美術館とは、

 

*パリ市立近代美術館(MAM: Musée d'art moderne de la Ville de Paris)

*東京国立近代美術館(MOMAT: The National Museum of Modern ArtMOMAT)

*大阪中之島美術館(NAKKA: Nakanoshima Museum of Art, Osaka)

 

 です。上で言う「共通点のある作品でTRIOを組み、展示する」というのは、たとえば「都市の遊歩者」というテーマで以下のような作品を並べて展示してある、というようなものです。

 

(「モンマルトルの通り」byモーリス・ユトリロ、1912年、MAM)

(「並木道」by 松本俊介、1943年、MOMAT)

(「レストラン(オテル・デュ・マルシェ)」by 佐伯祐三、1927年、NAKKA)

 

 もちろん、描いた画家の方はこんな風に並べられるなんて考えて描いたわけでもないのですが、しかしこうして並べられると、やはりそうして並べたなりの面白さがでてくるのです。

 

 それで、3つの美術館から集められただけあって、有名画家の作品が結構含まれていて、なんだか得した気分になりました。チケットは大人2200円だけど、それでも見ごたえが随分とありました。

 たとえば、上に挙げたもののほかに

*「電気の精」by ラウル・デュフィ 1953

*「無題」 by ジャン=ミシェル・バスキア 1984

*「果物棚」 by アンドレ・ボーシャン 1950

*「夢」 by マルク・シャガール 1927

*「幽霊と幻影」 by サルバトール・ダリ 1934

*「レディ・メイドの花束」 by ルネ・マグリット 1957

*「慰めのアンティゴネ」 by ジョルジュ・デ・キリコ 1973

*「椅子にもたれるオダリスク」 by アンリ・マティス 1928

*「髪をほどいた横たわる裸婦」 by アメデオ・モディリアーニ 1917

*「昼食」 by ピエール・ボナール 1932年頃

*「少女」 by 藤田嗣治 1917

*「プリンセス達」 by マリー・ローランサン 1926 

*「男性の頭部」 by パブロ・ピカソ 1912 

*「パイプを持つ男性」 by フェルナン・レジェ 1920

*「黄色の中の思考」 by パウル・クレー 1937

*「No.H.Red」 by 草間彌生 1961

 

...等々、他にも岸田劉生とか、藤田嗣治や佐伯祐三の他の作品とか、色々とありました。

 

 最後の方は抽象的な展示や映像作品が増えてきて、いつものように「美術は果たして近現代に発展したのか?」という気にもなりましたが、それでも出口を出たときにはかなりな満足感に包まれたのでした。

 

 個人的に一番面白いなと思ったのが、「電気の精」by ラウル・デュフィで、これは10点組のカラー・リトグラフで、この版画、ボーっと見てると ラウル・デュフィらしい色合いや線の縦長の絵の、なにやら下の方には色んな昔の人らしいのが描かれているなあ...なのですが、よく見てみると、その人物画の一つ一つが、「ろうそくの科学」でも電磁気学の基礎でも有名なマイケル・ファラデーだったり、「クーロンの法則」のシャルル・ド・クーロンだったり、電磁気学のマックスウェルの方程式や、熱・統計力学のマックスウェルの悪魔で有名なジェームズ・クラーク・マックスウェルだったり、昔の科学史上の偉人の名前が書かれているのです。単なる版画、ではなくてそうした科学の進歩も描かれていて...というかデュフィのような画家がそんな科学の偉人たちの肖像を描いたりしたのがなんだか面白いと思えたのでした。

 

 この展覧会、「そのうちに行こうかな」でグズグズしていたのがバカみたいに思えるほどに、「迷わず行くべきだった」と私には思えた展覧会でした。図録も買ってしまいました。「もっと大判にすればいいのにな」とは思いましたが。

 

 この展覧会に行くと「所蔵作品展 MOMATコレクション(2024年4月16日–8月25日)も見ることができるので、しかも所蔵作品もなかなかの作品ぞろいなので、最後には芸術でお腹いっぱい意識朦朧、疲労感を覚えるほどに十二分に堪能しました。さすがに「国立」近代美術館。

 平日の昼間で混雑とも言えないけど、海外からの観光客も適度にいたりして、空いているとも言わない絶妙な、寂しくもなく混雑でストレスを感じることもない混雑具合でした。でも、今後は夏休み期間もあってずっと混雑してくるのでは。ご興味ある方はお早めに。