(「僕は何かと危険を察知して回避するんです」とビーグル犬まろさんオス10歳)

 

 ビーグル犬まろさんは、ブリーダーさんのところでショードッグとして途中まで育成されましたが、どうしてもショー会場に行ったときに尻尾を下げてしまうということで諦められ、11ヵ月のときに我が家にやってきました。だから実は名前が二つあって、我が家にやってきてからの名前は平安貴族のような「まろ眉」だったので「まろ」、ブリーダーさんのところにいたときは、何かにつけて驚くので「じぇじぇ」という名前だったそうです。朝ドラの「あまちゃん」の主人公が驚いた時に「じぇじぇじぇ」と言ってましたが、まさにあの「じぇじぇ」です。

 そういう性格だと、「臆病」「驚きやすい」みたいに言われがちですが私から見ると「慎重」「観察力に優れて頭が良い」「危機回避能力がある」なのです。

 

 彼は、朝夕のお散歩に行くときも基本はまず門から出たら周囲を見渡して危険がないかどうか確かめます。妙な犬の鳴き声(吠え声とか...)がした方には行きません。

 いつもと違った様子のある場所は慎重に危険性を計算しながら、少し大回りに距離をとって歩きます。たとえば、いつもはよその家の自転車にカバーがかけられていないのに、今日はカバーがかけられているとか、いつもはなかった場所に何本かのぼりがたてられてはためいていたり、いつもとの差を正確に察知して危険を計算しながら通り過ぎるのです。

 

 犬についても、知り合いで仲の良い犬であれば遠くでじっと見ていて、先方が自分に敵意がなくて自分を待っているような雰囲気であれば近づいていきます。知り合いの犬でも、仲が良くない犬だと全く無視します。仲が良くない犬は勝手に吠えかかってくるので、「コミュニケーション不能な奴だな」と判断してしまうということのようです。知り合いでなく初めて会ったときには慎重に相手を観察して自分に好意を持っている様子であれば近づいていき、そうでなければ「いなかったこと」にして無視します。その際の判断基準のうちには相手の身体の大きさも重要な要素で、トイプードルのような小型犬だとそれほど慎重でもなく、中型犬以上だとかなり観察しています。大型犬だと、ドッグランに行っていた頃はまあまあ躾が良い犬ばかりがいたのであまり気にしていませんでしたが、道端で出会う大型犬だとかなり慎重です。あまり気心が知れなさそうな大型犬だと、それとなく避けるようにして「いなかったこと」にしてしまいます。道端の草の匂いを嗅いだりして、相手の存在に気が付かないふりをしてやり過ごして一刻も早く現場から遠ざかるのです。大型犬を連れている人の多くが、犬が暴走したときにちゃんと制御できそうもなさそうな体力しか持ち合わせていなさそうな人が多いので、慎重に相手を判断するビーグル犬まろさんの性格は私には好ましいものとして映ります。

 

 人間に対しても常に観察して、子どもや子連れの親子にはあまり警戒しません。なんなら子供がさわりに来たとしても、おそらく大人しく触らせるのだろうと思います。ただしこれも基本は「無視を決め込む」ような感じです。

 老人のようなぎこちない動きをする人々にはなにかと警戒して、なるべく距離を置こうとします。若い女性、女子高生には我が家の娘達と共通のものを感じるのか、顔を見つめたりすることが多いです。

 気軽に近づいてきてしまう人、特に男性には最初は警戒感を抱くようで、無視をしてしまうか距離を置こうとします。

 

 先日、面白い光景に出くわしました。ビーグル犬まろさんはいつものように前方を観察し、数十m先に髪を染めて裸にダボシャツ、腹を出しているみたいな少々いかつい男性と、同じようなファッションの連れの女性を見かけ、その上でまろさんはあまり正面から顔を合わせたくないと思ったのか、道端の草の匂いを嗅ぎながら視線を合わせずやり過ごそうと思ったようでした。ところが、その人たちがすぐ近くまで来たとき、いかつい男性は「可愛い」と言い、連れの女性も「可愛い」と言いました。まろさんが警戒する必要など何もなかったのでした。人は見かけによらない、のですが人間とおなじく犬も人を見かけでまず判断するのです。

 とはいえ、まろさんは、結局のところ犬には色々あったので犬達に対しては相変わらず警戒を解く必要はないけれども、人間たちには「可愛い」と思われること、「可愛い」とはっきり言われることが多いようで、少なくともまろさんに対して何らかの悪意を持った危険な行動をする人間に出会ったことは一遍もありません。日常生活での人間相手には「可愛い」というのが最大の危機管理、最大の防御になっているんだなあと実感します。

 

 今朝は「中国で実験用ビーグル犬数百頭が殺されたうえで犬肉として販売された」なんていう胸糞の悪くなるようなニュースを読んでしまったのですが、我が家のビーグル犬まろさんが頭が良いのを見ていると、そんな温厚な性格のゆえに実験動物として使われてしまうビーグル犬達の中にもまろさんみたいに頭が良いがために自らの境遇を理解しより悲しむ犬達だっているんだろうなあと思って悲しくなりました。まろさんは、なんて幸せなんだろうな、とも。