(「もちろん、僕は犯罪をおかしたことがありません。犯罪者ピットブルに襲われたことはありますが」とビーグル犬まろさんオス10歳)

 

 「日本版DBS」というのができるそうです。それはどういうものかというと、新聞によると、子どもを相手にする職場で働く人に対して、たとえば学校とか学習塾とかですが、そういう人に性犯罪歴がないかどうかを確認して、性犯罪歴があれば就労制限をするという「仕組みなのだそうです。

 

 そういう制度を創設することを盛り込んだ「子ども性暴力防止法」というのが19日に成立したそうなのです。確かに、学習塾で盗撮とか、学校で性犯罪とか怪しい事件が起きていますから、親としてはそういう仕組みができれば変質者に触れることがなく子供が育てられるので良いと思います。

 

 そのこと自体は良いのですが、どうも引っ掛かるのが「日本版DBS」といういい方であり報道の仕方です。

 そもそも、DBSなんて言われたところでほぼ誰も知りません。それに「日本版」なんてつけたところで、なんだそりゃ?です。だいたいDBSとは何の略なのか?

 調べてみて、分かりました。 

 

 DBS:Disclosure and Barring Service

 

Disclosure and Barring Service - GOV.UK (www.gov.uk)

 のことだそうです。「日本版」DBSというからには、本家のイギリスのDBSも「性犯罪歴に特化」していると思うのが当然です。

 だから、最初私は「Disclosure」とか「Barring」だけで言葉として「性犯罪に関して」という意味を表すのかといぶかったのですが、辞書を見たところでそんな制限のニュアンスはないようです。ちょうど今から30年前の1994年に「ディスクロージャー」という映画(マイケル・ダグラスとデミ・ムーア)があって、その映画には女性上司から男性部下へのセクハラ的なものが描かれていましたが、その裏に陰謀があったりして面白い映画ではありました。

 上の本家のリンクを見てみると、やはり「性犯罪に関する」ものだけではないようなのです。当たり前ですが。

 本家DBSで職業の例として挙げられているのがバーテンダーとか鍵屋とか先生とか運転関係とか医療関係とか、要するにもっと広い職業、もっと広く「犯罪歴、逮捕歴」とかについて必要なときに、そういう前歴の有無の証明をするようなのです。どうした場合に、どういうDBSのチェックが必要とされるか決まっていたり。

 

 ちなみに念のためですが、

Disclosure:開示 (この場合は前歴の開示)

Barring:妨げる (この場合は就業に制限を加える)

Service:部局  

 

 の意味です。つまり、前歴(犯罪歴)を開示し、問題あれば就業に制限を加えることに関しての執行特殊法人。「Service」は、「シークレットサービス:秘密諜報機関」とか言う時の、あの「サービス」です。

 もう少し言うと、イギリスの政府の組織の一つとしてHome Office(内務省)があって、その傘下に28の部局や公共団体があって、そのうちの5つが執行特殊法人でその一つがDBS(Disclosure and Barring Service)ということです。だからDBSを「仕組み」といってしまうのは誤解を招くのでは。「日本版」と言うなら、本家DBSもそれに対応して「仕組み」でなければいけないから。しかしだいたい「仕組み」ってなんだか曖昧です。制度なのかシステムなのか組織なのか。本家が組織なのだから組織でないと。

Departments, agencies and public bodies - GOV.UK (www.gov.uk)

 

 よくビジネスの現場では「アップル トゥー アップルの比較」(apples-to-apples comparison)つまり「同一条件化での比較」なんて言いますが、「日本版○○」というのであれば、その「○○」の部分をもう少し揃えた使い方にすれば良いのになあと思うのです。今回は扱う犯罪の範囲も関係する範囲や職業も大分違うし、いい方だけ揃えても実態が大分違う。単に日本語で「性犯罪記録開示と就業制限システム」ではいけないのかな、と思いました。「日本版DBS」と言えば煙に巻けるとでもいうのか、偉そうに見えるのか知りませんが。