(「僕だって、考えてみたらお母さんから生まれてきたんです。お父さんは僕を産んでません。こういうと何か問題が?」とビーグル犬まろさんオス9歳)

 

 今月の18日、上川陽子外務大臣静岡県知事選の自民党推薦候補への応援の演説を女性支持者たちの前でおこない、自民党推薦候補、元副知事の大村慎一氏(60)を当選させましょうという意味で「この方を私たち女性が(知事として)うまずして、何が女性でしょうか」と発言したことが問題と解釈され、19日には「女性パワーで未来を変えるという私の真意と違う形で受け止められる可能性があるというご指摘を真摯(しんし)に受け止め、このたび撤回をさせて頂きたい」と発言を撤回されました。

 真意と違う形で受け止められる可能性がある、と忠告した人がいたそうで、さらにこの発言をめぐって色々な人がコメントしています。

 

 立憲民主党の塩村文夏参院議員は「...『女性が子どもを産む』ことを前提とした発言であったことが問題だと気づいて頂けていればと思います」と発言しています。

 モデルの長谷川ミラさんは「...時代に合っていない発言というか、目の前にいた方々に対しての発言がこういったメディアという形でわれわれ世代に届けられると、正直、こういう世代の方がまだ上にいらっしゃるから、もしかすると変わってないのかな...」と発言しています。

 弁護士の山口真由さんは「...自民党の家族観はトップを代えてもそう簡単には変わらないなというのが、私はヒシヒシと感じる...」と発言しています。

 

 その他にも「発言の切り取りだ」「許容できる」みたいなことを言う方々もいるにはいて、私にはそっちの方は理解できるのですが、どうも私には上のお三方(さんかた)の大前提がよく分からないのです。「発言の切り取り」とか「揚げ足取り」とか言う面を別にしても、何考えてんの?って疑問に思えるのです。

 

 「女性が子供を産む」という社会通念は悪であって今の時代では許されない

 

 とうのがこの方達の「大前提」のように思えますが、どうなんでしょう。

 男性は勿論、子どもを産めません。わざわざ何らかの手術をして「産める」ようなことをすればひょっとして産むことができるのかもしれないけれど、自然状態の生き物として男性は子供を産みません。であれば、「女性も産みません」では人類は、少なくとも日本人は自然消滅しますが、この方達は「それが今の時代の新しい常識だ」と言っているかのようです。一方では、少子化については当然「問題だ、日本の課題だ」と発言するのであろうに、もう何が何だかよく分からないのです。「日本人は少子化で地球上から消滅すべきだ」と思うのであれば、はっきりとそう言ってほしい。山口真由さんは結婚されてお子さんまでできているのに、家族観を変えるべきみたいなことを考えているようですが、両親と子供という家族観がおかしいのならどんな家族観が正しいというのでしょう。

 

 「貴女は女性なんだからいつか結婚して子供を産みなさい、それが人として正しい道なのです」と面と向かって言われれば、LGBTとかでなくても、相手がいないとか経済的に結婚は無理とかいう人たちは「それができたら苦労しませんよ」と反発する、それは分かるのです。私は男ですが、博士の学位を取っても食えない時代に「早く収入を得る道にたどり着いて誰か良い人と結婚して子供を作らないと一人前ではない」なんてことを言われたら、やっぱり「それができたら苦労しない」と大いに反発したものでした。でも、だからといって収入がなくて良い、それで結婚できなくても良い、それで子供ができなくても良い、なんてことは思いもよりませんでした。子供ができないのは生物として負けだと思っていましたから。

 

 今は、そもそもが「収入が少ないから結婚ができない、それで子供も持てない」という人が大勢いる時代で、別に「『女は子供を産むのが当たり前』という常識から解放された時代」というわけではないのではないかと思うのです。女性だって気に入った相手と相思相愛で夫婦で経済力があってちゃんと安心して子供を産むことができて、仕事を持っていて子育て期間が終われば普通に職場に戻れて活躍できるのであれば、子どもを産みたいと思う人は多数派ではないのかなと思うのです。不妊治療をする人たちだってたくさんいるでしょうし、そのための補助金制度だってあります。諸般の状況が良ければ、できれば結婚して自分の子供を持ちたいというのは、全員が、とは言いませんが多数派だとは思うのです。

 でも、そういう現代の「貧しさ」を糊塗して「女性が子供を産むことを期待されないのが当たり前になった時代、それが新しい考え方」と言われると、どうしてもウソ臭く感じられてしまうのです。むしろ、「貧しさゆえに多くの人々が夫婦と子供という『家族』を作るという生活を諦めさせられる時代」ではないだろうか、と思えて仕方がないのです。「女性なら全員が結婚して子供を作るべき」などと言っているのではなくて、中には異性と結婚するのが嫌だとか子供が大嫌いとか言う人もいるかもしれないから全員ではない、でも「多くの」人が、これまでの歴史と同じように、これまでの人類の歴史と同じようなことをしたい、連綿と命をつないでいきたいと思っていると思うのだけれど。政治家や有名人たちは裕福だから「大衆は好き好んでこれまでの歴史的な価値観を放棄している、時代は変わった」とでも思っていそうで、なんだか嫌だなと思います。