(「僕もね、色々と考えているんですよ」とビーグル犬まろさんオス9歳)

 

 ビーグル犬まろさんとお散歩していると、他のお散歩の犬と会うことが結構あります。そのたびに、まろさんは相手の犬によって色々な態度を示します。

 

 まろさんを見たら必ず敵意むき出しで唸って飼い主を引っ張ってまろさんを襲おうとする小さなプードルかチワワかミックスなのかなんだかわからない体重約2kgではないかと思われる超小型犬、に対しては「面倒くさい奴だなあ」とでも思うみたいに、まろさんは完全に無視します。その子がそこに存在しないかのように。

 

 まろさんを見かけると友好的に伏せして待っていて、近づくと「遊ぼ、遊ぼ」とでも言うかのように立ち上がってまろさんにじゃれつこうとする茶色いトイプードルの子に対しては、まろさんも友好的に遊ぼうとしますが、相手の子があまりにも興奮して「遊ぼ、遊ぼ」になるから相手の子の飼い主が遠慮して綱を引っ張ります。それでなのか、まろさんはいきなりポイッと相手の子を捨てるような態度になります。相手の子はいきなりまろさんが離れていくので「え?」と不思議な気持ちになってしまいます。

 他にもまろさんに慣れている白いトイプードルには、まろさんはつかず離れずくらいの距離感でお散歩をして、相手が先に行ってしまえばそれでバイバイになります。

 ビーグル犬達にも何頭か会いますが、お互いに「仲間だな」と思うのか、熱心にお互いの身体の匂いを嗅ぎあったり嗅がせあったりします。

 柴犬達にはかなり警戒をして、いつ襲ってきても対応できるようにまろさんは緊張しているようです。この頃は柴犬系統の犬達もまろさんを覚えたのでしょう、昔ほどガッと襲ってくることはないのですが、昔は激しく吠えかかったり激しく咬みつきかかったりしてくるのは毛が茶色系統の柴犬若しくはその雑種が多かったのでその時の学習でそうなったようです。

 

 ここまでは、相手の犬が好き、嫌い、無視、で分かりやすいのです。しかし相手によってはまろさんは複雑な行動を示すときがあります。

 

 ある白いトイプードルの子に狭い道で会うと、ビーグル犬まろさんとしては、くみしやすしと思うのか少し居丈高な様子で振舞います。警戒する必要もないという訳か、その子に急速に近づいて相手をびっくりさせてしまいます。

 でも、その子が20m先くらいの場所にいると「見つけた」という感じで遠くからしばらく眺めています。そのときは、まろさんとしては急速に間合いを詰めて近づこうとはしないのです。むしろ、時間稼ぎでもするように歩みを遅くして、或いはその子がいたあたり、おしっこをしたあたりを念入りに臭いを嗅ぎまわります。その間に相手はどんどん先に行ってしまうのですが、20mが50mになって、なんなら角を曲がって見失うんではないかというときでも距離を開けて静かに追跡します。その姿はまるで「送り狼」のようです。いえ、「襲おうとしている」のではなく、本当に単純に見送るかのように後をつけていきます。まるでストーカーです。相手の子が広い道を渡って、これまできた方角を逆向きに行くようになると、ビーグル犬まろさんは「あの子には興味ない」とでも言いたそうに最初に尾行を始めた方向をそのまま行って、相手の子が道を挟んですれ違うままにします。これも、ドラマなんかでよくある尾行をする人が使うテクニックです。尾行対象が振り返って戻ってきたら目を合わせずにそのまま通り過ぎろ。つまりまろさんは尾行者であり、ストーカーなのかもしれません。ストーカーという言い方は強烈ですが、少なくともまろさんはその相手の犬を個体で認識・識別していて、あとをついていってしまって、相手には気づかれないふりをしているのだから、人間がこの状況だと「忍ぶ恋」なのか?って思えてしまいます。しかも可愛い子に対して、近くなら少々急速に近づいて遠くから見かければ距離を離しながらついていくって、なんだか内気で乱暴な中学生の男の子みたいです。なんだか可愛い。親バカですが。

 犬の行動を擬人化し過ぎるのは良くないとはよく聞く話なのですが、それでもなんだか人間の心に当てはめることができるような行動を示されると、ついつい 「共感」してしまうのでした。