(「僕の場合は喉にものを詰まらせた経験はありません」とビーグル犬まろさんオス9歳)

 

 お正月になるとお餅をのどに詰まらせて死ぬ老人のニュースが毎年のように何件か報じられます。ツービート(ビートたけし・きよし)の40年前の漫才ネタでも「餅をのどに詰まらせる老人」というのがありました。危険なのはわかるし、いきなり亡くなるというのは悲劇に違いないのですが、急病とか事故みたいなものにくらべてどことなく、「滑稽味」いや滑稽と言ってはいけないのですが、「そんなことで人は死んでしまうんだ」という意外性が不謹慎でありつつも漫才で取り上げられてしまう原因だとは思います。

 

 私も、そういう「餅で死ぬ」なんてありえない、とずっと思って心の中で少し油断が生じていました。いや、「餅で、餅がのどに詰まって死にかけた」というのではないのですが、別のものがのどに詰まって死にかけたことはあります。それは何か?

 それは、牛肉の筋張った部分です。赤身と脂肪の間くらいに筋っぽいところがあって、それを飲み込もうと思って失敗して死にかけた。

 

 あれはもう数年前になるのですが、元気に「牛肉、沢山食べよう!」くらいに思っていました。サイズが少し大きめのゴム草履のようなサイズの海外産の牛肉で、スーパーでわざわざ「○○ビーフ」と名づけて売り出していました。私も、元気なものだからバクバク食べ始め、問題の筋っぽいところも、「ちょっと大きいかな」と思いながらも一息に飲み込もうと口に入れました。

 しかし...飲み込みきれなかったのです。筋っぽいところが食道の中を落ちていく感覚はあったのですが、それでもまだ口の中に筋っぽいところの端が残っているのでした。さらに飲み込もう、と思って飲み込もうとしたのですが飲み込みきりません。

 その肉のために呼吸も苦しくなっていることに気が付いたのですが、にっちもさっちいかないありさまで、目を白黒の状態になりつつありました。

 仕方ないので、口の奥に手を突っ込んで筋の端をつかんで、飲み込みきれなかったものを引っ張り出すことにしました。内視鏡の検査で、最後の内視鏡の端が口から取り出されるような感触と共に、その牛肉の筋っぽい部分が無事、取り出されました。ようやく、息がちゃんとできるようになりました。

 あのときは死ぬかと思いました。

 「自分は元気」と思っても、どこに油断の種が潜んでいるかもわからないという話で、あのときは元気なつもりでいて、一気に飲み込もうとして失敗したのが、それでもまだ「手を突っ込んで筋を取り出そう」と自分で考えるくらいの理性は残っていたので助かったのでした。そのとき、今後、さらに歳を取って焦るだけになったりして「何かをのどに詰まらせて死亡」なんて話にならないように、気を付けていきたいと思ったものでした。