(「人間は『先輩・後輩』って関係、なかなか大変なんですねえ。その点、犬は気楽です」」とビーグル犬まろさんオス9歳)

 

 宝塚歌劇団で宙組(そらぐみ)の有愛きいさん(25)が9月に急死(転落死)、その裏には長時間労働と強烈なパワハラがあったとか言われています。宝塚歌劇団側は事件の報告書を発表したものの、遺族側からは「劇団と上級生の責任を否定する方向に誘導している」として調査のやり直しを求める声があがっているそうです。宙組の66人のうち62人がインタビューを受け4人はインタビューを拒否、結局パワハラ・いじめの張本人なのではないかと憶測が飛び交う事態にもなっています。

 

 今年起きた事件で「組織」が関わるものでは、

 

1.日大アメフト部大麻・覚醒剤事件

2.ジャニーズのジャニー喜多川性加害事件

3.宝塚宙組の自死事件

 

 が印象的でした。

 このうち日大の件は「スポーツだけで人生優遇されてきた頭の悪い奴らが一旦、落伍者になると落ちるものだな」という印象を残しました。日本の大学スポーツ界も、「大学生なんだからちゃんと勉強を頑張って、スポーツで芽が出なくても『学をおさめた』一般の学生として生きていけるように」という風にならないと根本的にダメだろうと思います。勉強できない脳筋でもOBのコネで就職できるとか言ってる限りは不祥事は起き続けるでしょうね。

 まあでもこれって、日大の組織としてのダメダメさはもともとは「脳筋の権力志向の人が長らく権力を握っていた」ということも原因なのですが、結局はアメフト部も「脳筋はダメだぁー」ということだと思います。

 

 ジャニーズの件は「変な奴がトップに居座り続けるとロクなことにならない」というのが強く印象に残りました。ジャニー喜多川と言う人は今で言うLGBTだったわけでそんな人が自分の組織において絶対的権力者だったがために、また外に対して影響を及ぼせる立場だったために、誰も逆らえなかったわけですね。

 この場合、今回、被害者であるはずの人が誹謗中傷を受けて自殺したらしい、なんてことまで起きて痛ましい限りだし、誹謗中傷になんら有効な手を打たなかったとされるSMILE-UP社の責任は重大だと思います。

 

 日大の件なら日大限定で、脳筋バ〇が支配していた大学の体質と、脳筋バ〇を優遇し挙句に落ちこぼれが起こした事件、ジャニーズはジャニーズ限定で、LGBTの絶対権力者による事件、で事件に関係した組織特有の問題だと思うのです。

 

 でも宝塚のいじめ・パワハラには日大やジャニーズの件と違って、多くの日本人の中に深く根付いている...というか根付かされ当たり前になっている文化が根底にあるのではないかと思うのです。それは、「上級生・下級生/先輩・後輩の関係」と「上の者には無理難題も従順に」という文化です。

 日本では小学生の頃以降、ずっと学校の部活動、課外活動、学校の行事等々、時には学校を出て就職までもどこどこの学校の先輩を会社訪問とかいう先輩・後輩という

学年で上下を決める意識が刷り込まれているように思います。芸人の世界でも芸歴が何年で上下を決めるとか、芸人養成学校の何期生だから上だ下だという意識があったりする、それで挨拶をどうするみたいなことも決めるようです。

 

 だから宝塚の件も、その延長上の上級生が下の者を支配する関係というのがまずあって、仕事だって下の者が上の者から無理難題を押し付けられれば徹夜してでもやるとかいう構造なのでしょう。それで、そんなのは社会では普通によくあることです。宝塚の問題、他と一線を画す大問題はその上下関係とそれによる無理難題が度を越した、ということだと思うのです。

 だから宝塚歌劇団に罪がないみたいなことは決して思わないのですが、こうした問題、他の二つの事件に比べてより身近なだけに、「気を付けないと、どこの組織でも起こりうるので危ないな」と思えました。


 女性だから相手を傷つけるという暴力的なことでも殴る蹴るではなくて「額にヘアアイロン」なんてことをしたとされていますが、たとえばこれが男子運動部とかで血の気の多いような集団だったら殴る蹴るの直接的暴力とか、間接的に長時間無理なトレーニングをさせる(無理なしごき)とかの行為になっていきます。学生時代だったら、1年学年が違うだけで立場が全然違うとかよくある話です。さすがにこういう殴る蹴るのは会社だと傷害罪とかになってしまうので少なくとも大企業とかではなかなか起こらないかもしれませんが、企業によってはそういうことがある場合も、隠蔽込みであるでしょう、特にあまり頭を使わない体育会系的な体質があるようなところでは。

 

 長時間の労働で有愛きいさんが疲弊したことだって、会社だったらそれこそ長時間残業の問題はまだまだ潜在的にはあると思うのです。電通のような大企業でも長時間の無理な労働で8年前の2015年12月に疲れ果てて自殺した事件は当時、大いに社会に警鐘を鳴らしたのですが、それでも未だに過重労働なんてのは残っているだろうし、それがこんな宝塚歌劇団のようなところで、そうした構造が顕在化したということなのだろうと思うのです。

 

 宝塚は伝統ある「女の園」、そんな特殊性に注目せずに、もっと一般に「人間は自分が上の立場だと思うと、下の者には上から目線で厳しくしがち」という目で見れば、いじめに結びつ人間の本質も隠されていますから、危ないなと思うのです。人間は自分たちが「サルより上等」と思うほど以上に「猿山のサル」なのではないかと思わないと、危ない。