(「朝/Morning」 by 小田野 尚之)

 

 横浜駅東口のそごう美術館で開催されている「再興第107回院展(2023年3月24日(金)~4月16日(日))」に行ってきました。

再興第107回院展 (sogo-seibu.jp)

 

 今回も昨年と同じく現代の日本画を堪能することができました。

 今回、展示された作品の中で一番印象深かったのは小田野尚之さんという方の「朝/Morning」という作品でした。田舎の風景で必ずしも「花鳥風月の伝統的な日本画の題材」という訳ではないのだけれど、それでもいかにも日本の田舎の空気感とでも言うようなものがよく出ているのです。写真と見まがう精密さで水面に景色が映る様子などの光の描写が、西洋画のモネやシスレーなどの光の描写とかなり違うけれども、それでもありうべき方向性が示されていているように思えます。

 この方、調べてみたら、下のリンク先をご覧になっていただきたいのですが

同人詳細|公益財団法人 日本美術院 (nihonbijutsuin.or.jp)

院展には何度も出品されていて尚且つ何度もその院展の中で「内閣総理大臣賞」とか「文部科学大臣賞」とか「日本美術院賞(大観賞)」とか受賞されてきた方でした。

 リンク先にある106回の「新緑の頃」とか105回の「風止む」とかも確かに記憶に残っています。つまり、私は知らず知らずのうちに、この小田野さんの作風に惹かれていたということです。

 

(「霧の柳生道」 内閣総理大臣賞 by大野逸男)

 107回の、今回の内閣総理大臣賞はこの作品です。作者は「霧の向こうから武芸者が現れるような思い」と言っています。そんな雰囲気のときに取材されたというのがなんだか羨ましい気もします。私は京都に大学で下宿していた頃に、柳生道を訪れたことがあったのですが、夏と言う季節が悪かったのか昼間と言う時間が悪かったのか、絵に描かれたような神秘的な雰囲気はあまり感じ取ることはできませんでしたので。しかし、なんとなく柳生道というと懐かしいような気がします。

 

(「音楽室は根の国」 日本美術院賞(大観賞) 東京都知事賞 by 川崎麻央)

 

 これは音楽室の壁に貼ってあるような大作曲家たちを描いたものらしいのですが、私は...ごめんなさい、あまり好きとは思えませんでした。でも私が好きかどうか関係なく、日本画壇として、多様な題材や方向性を目指す日本画としての期待を込めたものではないかと思いました。

 

(「叢林残雪」 by 番場三雄)

 

 そもそも私はこういう絵の方が好きです。

 描いてあるのは山形県の山なのですが私には新潟の田代・かぐら・三俣のスキー場のリフトを上る途中の景色を思い出させてくれます。画面にはリフトなんて一つもないしコースもない訳ですが、なんとなく山並みが思い出させてくれるのです。「だから何だ」って話なのですが、結局、何かを「好き」だと思うか否かと言うのは、自己のそれまでの経験に照らしあわせて判断することもあるのだろうなと思えてきます。スキー場には幸福な思い出がいっぱい詰まっているのですから。

 

(「朝涼」 by 伴鈴子)

 

 同様な意味合いで、この建物は奈良か京都か鎌倉か分かりませんが、こういうところを訪れるのは私も大好きなので題材として共感がもてて、絵の雰囲気が素敵な感じがして、好きなのです。この絵の中に入り込みたい。

 

ということで、今回の展覧会で私が好きだと思ったもの感心したものを中心に書きましたが、それだとこの展覧会のリンク先の紹介ページにあるような作品と結構ずれているとあらためて思います。

 この展覧会、全85点だそうで、他にも多様な作品が掲示されていて、色々な人にとって「自分の選んだナンバーワン」というものが見つかると思います。

 妻なんかは先日、娘の入学式がてらに私がこの展覧会に誘ったのが、リンク先を見て全て見たような気になって断ったので、私が今日横浜に出直してやっと見てきたのでした。でも、私にとってはなんか得した気分になった展覧会でした。