(「私は1年中、一張羅のコートなんですけどね。まあ毛は生え変わりますけど」とビーグル犬まろさんオス8歳)

 

 ダッフルコートの革製のボタン紐が切れているので、そろそろ買い替えようかと思って2-3週間前にショッピングモールやデパートに買いに行きました。

 ところが、冬物のコートとかは既に店先に並んでいるのに、なかなかダッフルコートは売っていません。U社の店先には1万2-3千円かで売っていたのですが、化繊でできているからなのか薄くて寒々そうで、即決で「これにしよう」とは思いませんでした。P社にはあったので価格を確かめたら二十数万円でした。ただその割にウールの比率が70%化繊30%と、私が持っているコート(ウール90%化繊10%)よりもウール比率が低いし、生地が厚くもないのでやはりなんとなく寒々しい、、、とまではいかないけれど、頼りになる防寒着という感じではありませんでした。

 

 私がダッフルコートにこだわるのは幾つかわけがあって、まず一つ目は頼りになる防寒着だからです。革製のボタン紐が切れてしまった今のコートは、買ってから十数年、ひょっとして二十年以上かというくらいに着ていますが、その間に何度も厳寒のスキー場との間の往復で着ていって、寒く思ったことはありませんでした。行きの夜行バスの中では眠るときには隣の席の妻と一緒に掛布団として使っていました。生地が分厚いので雪や雨にあっても着ている人間が濡れてしまうことを気にすることはありません。フードもかぶれば髪も濡れず完璧です。というくらいに、分厚い生地のダッフルコートが重宝していました。コートとしても随分長持ちです。

 二つ目は会社への行き帰りにスーツの上に着ても、プライベートでセーターの上に着ても、どちらもそれなりにサマになるファッションなのです。確実に「ビジネス用」という形状のコートだとさらに防寒や、コートの襟を汚さないためにもマフラーが必要、ということになるのですがダッフルコートを着る限りはマフラーも不要です。まあ、フォルムが「もっさり」するのは否めませんが、それでも別に何の問題もありません。

 三つめは、もうそんな理由からずっとダッフルコートを着続けているので、なんとなく気持ちの上でもあの形状に、あの自分が着続けてきたコートの質感に、離れがたい愛着を感じているのです。

 

 自分の住んでいる市の幾つかのショッピングモールではどうやらU社かP社のしか見当たらない、となったら今度はWebで見つけようとしたのですが、安いのから高いのまで玉石混淆のようです。結局、大まかにサイズは分かっても着てみないとフィットするかどうかなんてわからないので、注文するのはかなりのリスクがあります。

 

 では横浜とかの大都市ならどうかということでWebでも見つけようとしたのですが、どの紳士服売り場にもある、どのファッションの店にもある、というものでもなく何故か「売り切れ」になっていたりするようでした。

 

 であれば壊れたのはボタンの革紐のところだけだし、修理はできないのかとWebで調べてみたら、一つの付け替えで2千数百円、さらに送料がかかって、その前に写真を送って確認させろとか、なかなか面倒くさそうです。

 新品で実際にあったものだと二十数万円、しかし気に入るような質感(「品質」ではなくて)ではなくて、それ以外にWebで見つけたものだと7-8万円とか3-4万円とかで、今現在の壊れたものが当時の価格で十数万円だったことを考えると、買い替えたからハッピーかどうかはなかなか判断しにくいのです。

 そこで念のために、最寄りのショッピングモールの洋服修理屋さんに電話をして確認してみると、「革紐に対応」とはWeb上では書いていなかったものの、普通に「革紐を持ち込みならそれを使って修理します。まずは持ってきていただけたら判断します」と言ってくれたのでした。その修理屋さんの入っているショッピングモールの隣のもう一つのショッピングモールにある手芸屋さんで革紐を売っている筈との情報も教えてくれて。

 

 そこで実際に修理屋さんに行って確実に対応可能、というのを確認してから今度は手芸屋さんで革紐を買って持ち込んで、修理をお願いしました。修理代金は1,320円、革紐代は220円で合計1,520円。新品を買うとするとその十倍か100倍か百数十倍でなおかつ必ずしも満足する質感(「品質」とか「性能」ではありません)ではなかった可能性が高いです。

 

 日本の経済のことを考えれば新品を買った方が良い、のかもしれません。でもそんな安く済むのならそっちの修正と言う方で良いのではというのが今回の決断でした。 

 少し高めのものを買い替えるときはいつも迷うことで、以前に新車で買った自家用車を買い替えたときも、買い替えるまでに結局は16年乗り続けてしまいました。さすがに古くなって車検や点検の時に色々な機構で部品交換が増えていったのではあるけれども、ボディやシートが古くなって傷んできたなんて感触は皆無だったし、自動車の形や運転の感覚に愛着があって、なかなか買い替えに踏ん切りがつかないものでした。だましだまし乗り続けて16年。

 「良いものを長く使う」というのは少し高めのものを買った場合にいつも思うことで、しかし「高価でもないものを気軽に買い替える」というのもファッションならありですね。経済を回していくのはおそらく後者の考え方で、それが「高価なものでも気軽に買い替える」だったのがバブル経済の頃でした。

 今はバブル経済のころのような消費マインドが消費者に戻るべくもなく、今回も「本当は新品を買うのが経済を回す行動なんだけど」と自分では思いながらも、今までのコートへの愛着と、自分自身の経済の事情を考慮して修理ですましたという話でした。経済の足しにあまりならなくてすみません。