国立新美術館で開催中の「メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年」展に行ってきました。(メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年|企画展|展覧会|国立新美術館 THE NATIONAL ART CENTER, TOKYO (nact.jp))(メトロポリタン美術館展 西洋絵画の500年|2022年2月9日(水)〜 5月30日(月)国立新美術館 (exhn.jp))

 

 今年は特に眞子さんで話題の、あのニューヨークのメトロポリタン美術館です。この美術館、今回初めて知ったのが「ニューヨークのセントラルパークにある」ということでした。恥ずかしながら知らなかったです。セントラルパークと言えばもう20年以上も昔だったか「パラサイトイヴ」というゲームでミミズが巨大化したような怪物がボコボコ出てきたところです...って無駄な話ですね。

 

 これ、「そのうち行こうかな」とずっと思っていて、とうとう今日をまぜてあと2週間、なんてなってしまって慌てて行ってきました。こういうの、終わり近くになると結構混みますから。いや今日も「コロナって何?ソーシャルディスタンスって何?」くらい混んでいました。行列、凄かったです。

 

 入場料2100円。絵画展としては結構お高めです。「高いなあ」と思いながらも見に行ったら、しかーし、いやいやそれだけの価値はありました。日本で言うと室町時代から明治時代の頃までの500年間の古今の有名画家の作品が展示されています。有名画家の作品ばかり。

 構成は

Ⅰ.信仰とルネサンス

Ⅱ.絶対主義と啓蒙主義の時代

Ⅲ.革命と人々のための芸術

 と時代ごとに分けられています。

 

Ⅰ.信仰とルネサンス

 特に「Ⅰ.信仰とルネサンス」は先日、茅ヶ崎市美術館でテンペラ画や油彩の修復のやり方など見てきたりしたばかりなので、本物のフラ・アンジェリコ、ラファエロ・サンティ、カルロ・クリヴェッリ、フラ・フィリッポ・リッピ、ハンス・ホルバイン、ルカス・クラーナハ、エル・グレコ、ティツィアーノ・ヴェチェッリオや、その他の同時代の傑作を見ると、さすがに「本物の迫力」も感じました。

 ここのゾーンで私が特に感心したのが、リンク先の中にはないのですがカルロ・クラヴェッリの「聖母子」という絵がまず一つ。図録だと既によくわからなくなっていますが、「この絵は本当に1枚の絵なのか?」と思うくらいに立体感が半端なかったです。

 さらに感心したのがエル・グレコの「羊飼いの礼拝」。これはリンク先にあるように日本初公開だそうです。リンク先の画像だと分かり難いのですが、絵の中に表現された光が素晴らしい。エル・グレコっていうと同時代の画家とは結構ズレた特徴のある人物像や光の描き方で、昔から好きな画家ではあったのですが、この絵はそうしたエル・グレコらしさがよく出てて素晴らしいです。

 

Ⅱ.絶対主義と啓蒙主義の時代

 ここも有名画家のオンパレードです。

 ペーテル・パウル・ルーベンス、ディエゴ・ロドリゲス・デ・シルバ・イ・ベラスケス、バルトロメ・エステバン・ムリーリョ、カラヴァッジョ、ジョルジュ・ド・ラ・トゥール、ヨハネス・フェルメール、レンブラント・ファン・レイン、アントワーヌ・ヴァトー、フランソワ・ブーシェ、ジャン・オノレ・フラゴナール、エリザベート・ルイーズ・ヴィジェ・ル・ブランやその同時代人の画家たち。

 リンク先にはないのですが、ルーベンスの絵を見たら「フランダースの犬」を思い出しました。パトラッシュとネロが絵の前で凍死するという悲しい話ではあるし、この展覧会の絵はその絵ではないのですが、雰囲気は似ているような気が。

 ピーテル・クラースの「髑髏と羽根ペンのある静物」はリンク先にもありますが、その時代に既にそういう題材で絵を描いていたんだなあ、と感心しました。

 フランソワ・ブーシェ「ヴィーナスの化粧」は、リンク先にありますが、いかにも泰西名画という雰囲気の絵でなかなか素晴らしかったです。

 光っていたのが、リンク先にもありますがマリー・ドニーズ・ヴィレールの「マリー・ジョゼフィーヌ・シャルロット・デュ・ヴァル・ドーニュ」でした。実際に人だかりができていましたが、なにか逆光の人物の光が妙に生々しくて、その空間の中で光って見えるのでした。今にもこちらに話しかけてきそうな雰囲気すらあるほどに、生きているのです。

 ジャン・オノレ・フラゴナールは「二人の姉妹」という絵ですが、フラゴナールには思い出があって、京都での大学時代に1980年にフラゴナール展を見に行って、どうも新聞が写真撮ってるなと思っていたら自分が記事の写真に写っていて「腕くむ人も」とかいう記事になっていたな、ということがありました。

 

Ⅲ.革命と人々のための芸術

 ここはまずジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナーにやられます。あの夏目漱石の「坊ちゃん」の中で出てくる気障な赤シャツが「ターナーの絵にありそう」とか言い出すあのターナーですが、これも明るい光が良く描かれています。

 その後は、ギュスターヴ・クールベ、カミーユ・コロー、オノレ・ドーミエ、フランシスコ・デ・ゴヤ・ルイシエンテス、エドゥアール・マネ、オーギュスト・ルノワール、クロード・モネ、エドガー・ドガ、ポール・ゴーギャン、フィンセント・ファン・ゴッホ、ポール・セザンヌ、アルフレッド・シスレー、クロード・モネなど。

 「うへえ!」って驚いた解説があったのはギュスターブ・クールベの「水浴する若い女性」で、「写実的でセルライトの目立つ脚は」みたいなことが書いてありました。そこまで言うか。念のため、セルライトって脂肪の塊で脚がボコボコしたりする奴です。「その絵ではそういうボコボコまで描かれている、滑らかな絵とは対照的」みたいな振りで次の絵も紹介されたのですが、絵のモデルもいい迷惑でしょう。

 オーギュスト・ルノワールの「ヒナギクを持つ少女」はまさにルノワールの絵、という感じ、エドガー・ドガの「踊り子たち、ピンクと緑」はドガらしいし、ポール・セザンヌの「リンゴと洋ナシのある静物」は色合いがセザンヌっぽいなと思わせるものがありました。しかしフィンセント・ファン・ゴッホ「花咲く果樹園」はゴッホにしては薄味、クロード・モネ「睡蓮」は、「本当にモネ?」みたいなもので「現代絵画への架け橋」みたいな解説がなされていたものの、妙に平面的で光もあまり感じないものでした。とはいうものの新しい面は見られました。

 

 この展覧会、有名画家のオールスターのなかなか「見疲れする」展覧会ですが、良かったです。「いやいやメトロポリタン美術館はこんなもんじゃなくて、もっと良い作品が温存されているんだ」みたいな解説をされている方もいますが、さもありなん。とはいえ、これはこれで凄く楽しめました。ご興味ある方はお早めに。