(原画/ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ 東方三博士の礼拝(部分) 松澤周子)

 

 茅ヶ崎市美術館で開催されている「ヨーロッパ古典絵画の輝き -模写に見る技法と表現 展」に行ってきました。今日は祝日なので妻と一緒に。(ヨーロッパ古典絵画の輝き -模写に見る技法と表現 | 茅ヶ崎市美術館 (chigasaki-museum.jp))

 実はこの展覧会は「模写」ばかりでオリジナルのものが無いということらしいのでずっと行こうかどうしようかと迷っていましたが、妻にちょろっと「こういうのがあるけど、行く?」みたいなことを言った途端に「実は自分は30歳くらいのときにちゃんとした絵の学校に通ってテンペラ画の技法とかも勉強したのである」とかしゃしゃり出て、俄然、興味を持ったようになっていたので、二人でいくことにしたのです。

 

 国立西洋美術館、はおよそ一月ほど前にほぼ1年半に及んだ休館が終了し再開しましたが、その国立西洋美術館にあるような昔の、13世紀から15世紀くらいを中心とした絵画の卵テンペラ画とか卵黄テンペラ画とか、テンペラ画と油彩の混合したものとか、油彩とかの「模写」を絵の土台の板を作るところから始めて新しく作られたときの状態に再現した絵が、今回の茅ヶ崎市美術館の主役でした。また、近代絵画の模写もありました。

 だから「本物」よりは色鮮やかなのですが、そこにその絵が出来た頃の昔の人が見た様子が再現されているとも言えます。つまり、材料は同じと思われるものを使い、技法は同じと思われるものを使う、ということです。だからそうなる、そこが素晴らしいのです。

 作者は(敬称略)、松澤周子、有村麻里、木島隆康、田中智恵子、十二芳明、籾井基充、渡邊郁夫、の7氏。各々が興味ある分野で興味ある技法で各々活躍されていて、その作品たちが一堂に会したものとなっているのです。

 

 「絵画」というと、イーゼルに立てたキャンバスにチューブに入った絵の具をパレットに出して筆で塗るもの、というイメージが強かったのですが、この展覧会を見て、何百年も前に描かれた絵の時代はそもそもがその土台を作るところから始めていたのだ、というのがよく理解できました。なにやら板に膠で麻布をはりそれに石膏で何層も塗るとかでやっと土台ができ、さらにテンペラ画なら顔料を卵に混ぜて絵の具を作るとかやっていたようだし、そもそもの土台を浮き彫りみたいにしたりとか、金箔をはったり剥がしたり、金箔の上に刻印したり、メノウ棒というもので磨いてみたり、下色を塗ったり、その上にさらに顔料を塗っていったりと、まあ大変な工程を経てようやく完成するものなのだ、というのがよく理解でき、大変勉強になりました。

 

 

 そう言えば、展示されていた絵の中に妻が結婚前に自分の実家で模写していた絵の模写もあったりして、喜んでいました。

 

 第3展示室には顔料の原料なども展示されており、日頃は絵の具の色は「あるもの」として認識していたのが、自然にあるもの例えば岩石などをすりつぶして顔料にするとか、なるほどこういうもので絵の具と言うものができていたのか、というのを実感して、ここも興味深かったです。そういえば、日本画なんかも顔料を鉱物なんかから作っていました。

 

 帰りの車の中で、妻がまた過去の学校のことを調べてみたら、なんだか結構立派な先生たちに教えられていたりしたそうで、たとえばその中のお一人は武蔵野美大の先生をやられたとかなんとか。妻は2年くらいは通ったので自分のこと、覚えていてくれてないかなあ、、、と懐かしんでおりました。

 仕事や家族以外のことで、いつになくテンション高めの妻の様子も見ることができ、その点でも良かったと思います。