(庭にできた霜柱)

 

 子供の頃、冬の朝に庭の霜柱を踏みしめて学校に行くのが結構好きでした。

 あの「ザクッ!」という音と霜柱を踏み倒したときの足の感触が、いかにも「今朝は寒いぞ」っていう実感があって、少し暖かい日のぬかるみを踏むよりも好ましく思えたのです。

 

 子供の頃から、ずっと、単純に「霜柱は地中の水が凍って、その凍るときに土の隙間から出てきたもの」だと思ってきていました。水が凍ってビンが割れるとか、水道が破裂するとか、そういうものの一種で、氷の方が水よりも体積が大きくなる分、、、実際に氷は水の体積の1割増し程度になるのですが、、、地中で水が氷るときに体積が増えるので、その増えた分が霜柱になるものなんだと、お恥ずかしいことに、ずっと思い込んできていたのです。

 

 つまり、水が地中で凍る場合に厚さ1㎝分凍るとすると、霜柱になる部分の面積が全体の10%程度であれば、丁度、高さ1㎝の霜柱ができる...いやいや、だとすると厚さ1㎝の凍るところは全部水でなければいけません。水の体積に対して10%増しの体積になるのだから。

 うん、それでは厚さ1㎝分、凍るのではなくてもっと深くまで凍るからこそ、泥の中での水の分の体積分だけ凍って、体積が増して、表面の泥がフィルターの役をして霜柱になる、、、?

 だとすると水分が泥の中でたとえば25%含まれているとすると、純粋に水が氷る分は、1㎝分として換算されるから、厚さ4㎝の「泥+水」の層が凍ることによって、厚さ1㎝分の水の層が凍るということになって、それで表面の面積の10%分の隙間から氷が出てくるとすると、水が氷になった時の体積の増分とつじつまが合う、、、

 さて、計算上は合ってるみたいですが、これは本当でしょうか?

 

 間違いです。厚さ4㎝も地面がどんどん凍っていく?霜柱の高さなんて3㎝くらいの奴もあるわけで、だとすると厚さ12㎝にもわたって地面が凍る?永久凍土か?日本はそんなに寒いだろうか?自分ちの庭はそんなに凍っていただろうか?永久凍土ならそれ以降は霜柱できないんじゃないのか?

 

 そういう間違いなんて、早く気が付くべきなんですが、別にそんなに深くも考える必要もないので、なんとなく修正もせずにいままでのうのうと生きてきたわけです。「ボーっと生きてるんじゃねーよ!」なんです、はい。

 

 本当は、霜柱はそういうメカニズムでできるものではないのですね。

 

 霜柱ができるのは、地表面が凍り、そこに「毛細管現象」によって地中の水分がさらに供給されてそれがまた凍る、その繰り返しで霜柱が成長する、というものだそうです。なるほど、それなら凍っていない地中からどんどん凍り付く温度の地表面に水が供給され続ければ、長ーく成長もしていくわけだし、その下の地面が特に分厚く凍っているわけでもないようなことについても説明がつくわけで。このメカニズムでは下からどんどん凍るための水が供給されるのですから、むしろ永久凍土みたいな方が霜柱ができませんね。

 

 霜柱も固い地面のところだとできにくくて柔らかい地面の方ができやすいとか、特定の土のができやすいとか、色々とできる条件もあるようなので、「寒いから霜柱ができる」という単純なものでもないようです。確かに寒いからと言ってそこらじゅうが霜柱になっているわけでも全くないですしね。

 

 以前にも書いていたかもしれませんが、こんな風に間違って思い込んでいて、後で真実を知る、なんてことは結構ありそうです。

 しかし、今の時代、思いついたことの真偽を確かめることがWebで迅速にできるようになって結構、良い時代です。勿論、Web上の諸説は玉石混淆で信用できないものも結構あるとはいえ、だいたい多くの者が真であるらんとしていることに己の理性と知性を稼働させて真偽を確かめるなんてのは、かなり有効な方法だと思います。AIはインプットがヘンなら妙な結果を導き出しますが、人間はインプットがヘンでもそれをおかしいと思う理性はありますね。